ミドルシニアの羅針盤レター号外編#6(新春号)
  ミドルシニアの羅針盤レター 号外編#6(新春号)

個人パーパスと組織パーパスの融合
~中高年社員キャリア自律の一考察~

 定年後研究所長の池口です。新しい年を迎え、皆様いかがお過ごしでしょうか。
昨年より、「ミドルシニアの羅針盤レター」と銘打ち発信をしてまいりましたが、
本年もどうぞご期待ください。



 役職定年や定年後再雇用への移行を機に、その後の働き甲斐のある役割づくりやキャリアの多様化支援で腐心されている企業は非常に多いのではないでしょうか。

 また、シニア社員に限らず、個人のパーパスと組織のパーパスを合致させ、モチベーションや生産性の向上を図る社員コミュニケーションの取組も活発化しつつあるようです。

 アメリカの心理学者デシは、その昔「人は新しいことややり甲斐を求め、自身の能力を高め、発揮し、学ぶ傾向が備わっている」と主張しました。また同様にアメリカの心理学者ハーズバーグは動機づけ要因として「意義ある仕事を任される、個人的な成長、成長の実感が持てること」と記しています。

個人からの自律的なパーパス合わせ
 昨年12月、私が講師を務める早稲田大学キャリア・リカレント・カレッジで、ゲストスピーカーとしてお招きした糸藤友子氏は、東北大学発の脳科学ベンチャー(株)NeUで川島隆太博士が開発した脳トレの法人向けカスタマイズを担うプレーヤー社員です。

 糸藤氏には前職での役職定年を機に、「WANT」を重視した生き方への価値観転換を図った自らのキャリア人生を、早稲田大学で熱く語ってもらいました。彼女は自身のパーパスを「健康寿命の延伸、そのための認知症予防」に定め、川島博士に師事しながら最先端の脳科学を主体的に学び、今では好きな料理の知識を応用して「脳と腸の相関」に着目し、発酵マイスターとしてその発信に力を入れています。また、趣味の手芸を応用して手芸用品専門店ユザワヤと「脳トレ手芸シリーズ」の企画・商品化も手掛けた情熱の持ち主でもあります。まさに高い次元で個人のWANTと組織のMUSTを融合した働き方・生き方を体現されたプレーヤーで、「役職定年のお陰で、このような動きをさせてもらっています」と会社への感謝の思いも口にされました。

企業主導でのパーパス合わせ
 一方で、企業側では組織のパーパスの発信、個人への期待役割の伝達が組織として図られているでしょうか。糸藤氏のような高い次元で個人と組織のパーパスを融合する中高年社員は、まだまだ希少な存在であり、両者のパーパスを融合するための組織的な方策を必要とする企業が多いのではないでしょうか。

 先日HR分野のシンポジウムでご一緒させていただいた大和ハウス工業(株)人財・組織開発部長の菊岡大輔氏は、同社での「60歳を超えても働きがいを持って勤務を継続する」先駆け的な人事制度改正を長年担ってこられた人財・組織開発分野のリーダーでもあります。菊岡氏は講演の中で、
・65歳定年以降も含めたシニア世代の社員数が増加していく中で、個人のキャリア自律の促しは最重要テーマであること
・その為には、外に目を向ける他流試合や社内外での副業機会の創出など、組織として個人の成長を支援する人材育成制度の整備を進めてきたこと
を熱く語られました。

 まさに、人は幾つになっても成長するとの信念のもと、個の成長と組織の成長を鼓動される同社の取組に、大勢の会場参加者から感銘の声が伝わってきました。

自治体が進める副業マッチング支援とは
 昨年6月に東京都と(公財)東京しごと財団が「50歳以上のミドルシニア社員のキャリアシフト」と「都内企業の人材確保」の双方のニーズをマッチングする専門機関「プラチナ・キャリアセンター」を開設したことはご存知でしょうか。このセンターでは、「業務委託での副業・兼業を求める人材」と「業務タスクやプロジェクト遂行を個人に委託したい企業」との対面方式での交流イベント・マッチング面談の機会を定期的に開催されており、参加企業・団体の各ブースには、個人参加者が列をなす熱気に包まれています。そこでは自分の付加価値や自らのセカンドキャリアの可能性を発見する個人参加者も多いようです。また、マッチング後の副業を通じて、自身の成長を実感する人も増えてきているそうです。

 来月2月12日(水)当センター(虎ノ門)にて、副業の社内啓発やその効果に関心のある企業人事担当者向けに、定年後研究所も協力しながら「増加するシニア社員の一層の活躍に向けて~副業を活かしたキャリアの多様化」セミナーが開催されます。「副業を解禁したものの、社内での進め方がよく分からない」「シニア社員のキャリア支援策を充実させたい」との課題意識をお持ちの企業はぜひセンターを覗いてみてはいかがでしょうか。
当センターのセミナーHP こちら

以上



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