ミドルシニアの羅針盤レター2024#14
  ミドルシニアの羅針盤レター 2024#14


第2回「中高年女性会社員」のプロファイル

 本年(2024年)3月14日の公開セミナー「中高年女性会社員の活躍に向けた現状と課題」に登壇、ご好評をいただいた、坊美生子氏(ニッセイ基礎研究所准主任研究員)の連載(全4回)の2回目です。

 前回は、「中高年女性会社員」の人数が増えてきたこと、人手不足の中で、企業にとっては、彼女たちにより能力を発揮し、役割を果たしてもらう必要があることを述べました。今回は、そんな「中高年女性会社員」のプロファイルについて、定年後研究所とニッセイ基礎研究所が共同研究として行ったアンケート「中高年女性会社員の管理職志向とキャリア意識等に関する調査~『一般職』に焦点をあてて~」の結果からお伝えします。このアンケートは、従業員500人以上の大企業に勤める45歳以上の女性正社員を対象とし、「一般職」が回答者全体の約8割を占めているのが特徴です*。

*アンケートでは、勤務先にコースがある場合に「総合職」(エリア総合職等を含む)と「一般職」(「業務職」など旧一般職を含む)に分けた他、勤務先にコースがない場合でも、会社で基幹的な業務に就いている場合は「総合職」、定型的な業務に就いている場合は「一般職」に分類して集計しました。

 はじめに、中高年女性会社員の配偶関係をみていきましょう。企業からみると、社員の配偶関係はプライベート情報、という意識が強いと思いますが、こと、女性の働き方は、配偶関係や家族関係に大きく影響される場合もあるため、共同研究では踏み込んで尋ねました。

 その結果、全体では約4割が「配偶者あり」、約4割が「未婚」、1割強が「離別」、残りが「死別」でした(図1)。未婚の多さが目立つ結果です。総務省統計局の「国勢調査(2020)」によると、日本全体では、この年代の女性の平均未婚率は1~2割なので、平均を大きく上回っています。現在の中高年女性会社員が若い頃には、結婚・出産後に退職するケースが多く、いったん退職すると、パートなどの非正規雇用で再就職することが圧倒的なので、結果的に、正社員として中高年まで働き続けているのは、未婚が多くなっていると考えられます。ただし、共同研究は大企業を対象としていることなどから、未婚率が高めに出ている可能性があります。

 また同じ理由で、中高年女性会社員のうち子がいる割合も、全体の約3割にとどまりました。

 未婚や子がいないという状況であれば、比較的、働き方への制約は小さいと考えられますが、家計責任をシェアする家族がいないため、老後の経済的リスクが高いという側面があります。アンケートと同時並行して実施した大企業へのインタビュー調査では、未婚の女性社員が増えていることから、老後の暮らしも想定して、早めにマネープランなどの啓発を行っていきたい、という回答もありました。


図1.中高年女性会社員の配偶関係

 次に、中高年女性会社員の体調面をみていきましょう。中高年にもなると、病気や更年期症状など、様々な問題がでてくるのではないか、と予想される方も多いと思います。

 共同研究の結果、何らかの持病や不調を感じている人は、全体の約6割でした。年齢階級別に見ると、「持病(更年期障がいを除く)があり、通院している」は、「45~49歳」では14.1%、「50~54歳」では15.4%、「55~59歳」では19.9%と、年齢階級が上がるほど上昇していました。「60歳以上」では11.8%と低下しましたが、これは、体調に問題がない方が、定年を過ぎても多く働き続けているためだと考えられます。

 不調のうち、具体的な症状で最も多かったのは、「肩こり、腰痛、手足の関節の痛みなど、筋骨格系の症状」で、全体の34%でした。企業としては、このような症状を悪化させない職場づくりが必要となるのではないでしょうか。また、「更年期障がいで通院している」は2.9%、「通院はしていないが、更年期症状があると感じている」は16.3%でした。

 最後に、介護関連をみていきましょう。50歳代ともなると、皆さんの周りにも介護事情を抱えた方がポツポツいらっしゃるのではないでしょうか。

 共同研究の結果は、「過去に介護経験がある」は19.8%、「現在、介護をしている」は10.7%、「今後、介護する見込みがある」は36.6%でした。回答者の年齢階級別にみると、「過去に介護経験がある」は年齢階級が上がるほど高く、逆に「今後、介護する見込みがある」は年齢階級が下がるほど高くなっていました(図2)。「現在、介護をしている」が最も高かったのは「60歳以上」で16.2%でした。親の年代が関係していると考えられます。

 いずれにしても、「親の介護」は、中高年女性会社員の雇用管理や、60歳以上の方を再雇用する上で、外せないテーマだということが分かりました。企業側には、介護離職を防ぐ取組や、介護と仕事の両立をしやすくする社員同士の相互サポート体制、介護に関する情報共有の仕組みづくりなどが、期待されるのではないでしょうか。

 以上、中高年女性会社員のプロファイルを簡単にお伝えしました。次回は、中高年女性会社員のキャリアや、仕事への意識について取り上げます。


図2.中高年女性会社員の介護事情

【筆者プロフィール】

 坊 美生子(ぼう みおこ)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任
神戸大学大学院国際協力研究科修了。読売新聞記者として、大阪社会部や東京社会部、地方部で、主に労働分野や地方行政を取材。現在は、ミドルシニア女性のライフデザインや、高齢者の移動サービス、ジェロントロジーなどを研究している。2018年から和歌山放送ゲストコメンテーター。



当メールマガジンは一般社団法人定年後研究所が総合監修し、配信運営は株式会社星和ビジネスリンクが行っております。