生涯現役時代、「自分らしく社会と繋がる生き方づくり」
の3つの実践ステップとは?
定年後研究所の池口です。「ミドルシニアの羅針盤レター」をお読みくださり、ありがとうございます。
定年後研究所では、2021年度より中高年社員の活躍に携わる人事担当者の「本音ベースでの情報交換の場づくり」を目的に「シニア活躍推進研究会」を東京・大阪で定期開催しています。有識者をお招きしての基調講演と、6名単位の分科会で構成し、コロナ禍が収束してからは「対面開催」に切換え、今では東西併せて100名を超える人事担当者にご参加いただいております。(次回11月開催の案内を、当レターの末尾に掲載しています。)
そこで、過去数年分の分科会の議事録をAIに要約させてみると、以下の6つになりました。
・(役職)定年後の役割と居場所の喪失
・処遇ダウンによる「モチベーション維持」の困難
・キャリア自律を促す研修の早期化と実効性
・ITリテラシーへの対応とリスキリング
・年上部下を持つ「年下上司」へのマネジメント支援
・社外転身や地域貢献という新たな選択肢(越境体験)
いずれも、(役職)定年や再雇用というキャリアの転換点を迎えた中高年人材の活躍舞台を整え、支援したいとの課題意識が横たわっています。これを中高年社員当事者の視点に立ってみると、「幾つになっても、会社から必要とされたい」「会社を卒業してからも社会と繋がりを持ち続けたい」との切なる肉声が聞こえてくるようです。人生後半期でも「しごと」は人の幸福感を左右するとても重要な要素であることは、昨年度の弊所の大規模調査でも明らかになりました。(*1)
小職は、4年前に早稲田大学と一緒に「キャリア・リカレント・カレッジ」という中高年会社員が自分らしいキャリア後半を設計する実践講座(*2:約半年間、合計71時間の履修証明プログラム)を開設し、今年度4期目を迎えています。これまで巣立った100名弱の受講生の「半年に及ぶ本格的な越境体験とその後の変化のプロセス」を観察すると、経験豊かな中高年会社員が自分ならではのキャリア後半を設計するための以下の「3つの必要ステップ」が見えてきました。
ⅰ)過去の経験を振り返り、意味づけを図ること(自己理解)
ⅱ)多様な選択肢の存在を知ること(環境理解)
ⅲ)そして、好奇心を持って、当事者になること(越境体験)
半年間の講座でこの3つの必要ステップを40名のクラスメートと共に体感し、心の中のモヤモヤの霧が晴れていき、それぞれ思い思いのキャリアビジョンを宣言して巣立っていきます。ある修了生はビジョンとして「他流試合の中で、自分らしさを発揮する基盤ができた。現職を通じた社会貢献を改めて認識できたので、さらに専門性を高め、生涯にわたって自分を成長させたい」と記されました。
また、ここ2~3年、都市部の自治体や社会福祉協議会からも「定年前後世代向けの地域デビュー講座(ワークショップ)」の講師・ファシリテーターを依頼されるケースが目立って増えてきました。定年後自宅に籠るのではなく、地域社会の中で、自分らしい役割を見つけ、社会を支える担い手であり続けて欲しい、そのことで心身ともに健康であり続けて欲しいということが自治体の開催目的ですが、土曜日の午後、自治体のセミナールームに集まる参加者の表情は真剣そのものです。
先般9月に開催した関西のある自治体での参加者アンケート(回答数57名)によると、参加理由の大半は「セカンドキャリアについての情報が知りたかった」「定年後の働き方について考える機会が欲しかった」が占めています。また希望する定年後のキャリアとしては、「パート・アルバイト」「正規雇用での転職」「独立・起業」「地域貢献活動」「再雇用」など多彩な選択肢が並びました。参加者はまさに情報と交流を求めてご来場され、活発な意見交換も展開されました。
このことは企業でも観察される事象です。全国展開するある大手企業では、定年前後世代の社員を対象に「セカンドキャリアの希望」を尋ねたところ、「地域に貢献したい」「後進や若年層への教育に携わりたい」「社会課題の解決に関わりたい」が上位に並んだそうです。また、別の大手企業では、セカンドキャリアの不安の要因として、「選択肢が分からない。探し方も知らない」が目立ったそうです。
国が定める「高年齢者雇用安定法」では、企業の定年制度や雇用継続、就業機会確保の取り組みに加えて、地域の関係者が協働して多様な雇用・就業機会を創出する機能も明記されており、後者は「生涯現役地域づくり環境整備事業」として地域主体の展開が図られています。
冒頭ご紹介した「シニア活躍推進研究会」の次回(11月開催)では、厚生労働省高齢者雇用対策課長の今野憲太郎氏をお招きし、民間企業への期待をお話しいただくと共に、シニア人材流動化で大きな役割を果たす産業雇用安定センターの東西の事務所長もお招きし、広い視座で「中高年人材の持続的な活躍」を議論して参りたいと思います。ご関心のある人事担当者様はぜひ以下のリンクよりお申込みをいただいて議論にご参加いただければ嬉しく思います。
リンク先は⇒こちら
人生後半の自分らしい社会との繋がり方は、決して「一つの会社」だけで自己完結する問題ではないと思います。ぜひ、企業の枠を超えた取り組みで、人口減少社会の中での幅広い人的資源の有効活用に努めていくべきではないかと思います。弊所も微力ながら、社会全体での中高年人材の活躍に向けた取り組みを、自治体・NPOなど多様なセクターと協働して展開中です。ご関心ある向きは、弊所のサイトをご覧いただき、ご意見ご助言を頂戴できれば幸甚です。
(*1)定年後研究所・ニッセイ聖隷健康福祉財団 共同調査研究「60~70歳代の人生・仕事満足度調査(2025)」より
⇒詳細をご覧になりたい方は、弊所のサイト(問合せ)よりご連絡ください。
(*2)早稲田大学キャリア・リカレント・カレッジ
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