定年後研究所では、2021年4月「改正高年齢者雇用安定法(以下「改正法」と記述)」施行を機に、中高年社員の活躍推進に向けた企業人事担当者26名の「改正法」対応の検討状況等をヒアリングするとともに、60代以降も活躍を続けている現役シニア社員23名へのインタビュー調査を行い、「調査結果報告書(70歳現役時代に向けた企業と個人の確かな足音)」を発行いたしました。
今回の報告書は、定量分析やアンケート調査ではなく、企業人事担当者に加え、現役シニア社員のキャリア意識や就業動機等、生の声を掲載したもので、企業内で多くの60代社員と向き合う未踏の時代に向け、企業や社会として必要な支援方策を探る内容としております。

本号「定年後研究所News Letter Vol.5」では、上記報告書から、多様なキャリアを歩んでこられた現在活躍中のシニア社員の共通点(報告書本文P41,45)について、抜粋して紹介いたします。

50~60代に訪れたキャリア上の転機を乗り越えたシニア社員の共通点は?
インタビュー調査では、「50代シンドローム(定年後研究所が独自に定義した、役職定年や出向、配置転換等の転機により生じる、あきらめの気持ちや喪失感等)」を乗り越え、60歳以降もいきいきと仕事に向き合っておられる方々に、「50~60代の転機」「現在の仕事のモチベーション」「キャリアを繋ぐもの」「会社や社会に求める支援」について伺った結果、以下の特徴が浮き彫りになりました。

  • シニア世代の特徴でもある「親の介護」「自分の病気」「役職定年」「意に沿わない異動」など、転機は、様々な形で訪れるとともに、変化が進むスピードや、変化を乗り越えるのに要した時間も様々でした。
  • 転機を乗り越えるリソース(キャリアを繋ぐもの)は、多くの方が、転機を迎えるまでの会社員人生で培われた「仕事を成し遂げる基礎力」「異質な人とのコミュニケーション力」を挙げておられました。
  • 転機を乗り越えた現在は、それ以前よりも「やりがい」を感じられている方が多く、同じシニア世代や後輩の役に立ちたい、社会の役に立ちたい、との強い意欲を示す方も大勢見られました。
  • 「何歳になっても学び続ける姿勢」「自己理解やマインドセット」「自分のことは自分で決めるキャリア自律意識」等の重要性に言及される方が多く、加えて、転機を乗り越える「きっかけ」を与えてくれたり、新たな生き方を「ガイド」してくれる方の存在も大きかった、等の意見も寄せられました。
  • シニア向けのキャリア研修や、キャリア面談等を通じた個々の状況に応じた企業サポートとともに、行動変容には、伴走者や応援してくれる人等からの支援も重要であり、この点は、今後の企業におけるキャリア支援・フォロー面で考慮に値するのではないでしょうか。

    60代後半以降において活躍を続けるシニア社員の共通点は?

    4月施行の「改正法」は、企業に70歳までの就業機会の確保を求めており、多くの企業にとって未踏ゾーンである65歳以降の雇用や就業機会の提供が必要となります。
    そこで、上記に加え、60歳後半以降もいきいきと仕事に向き合っておられるシニア社員にご協力いただき、その中でお聴きできた共通点を挙げさせていただきます。

  • 若い社員との接点において共通して意識されている点は、「視線を下げて」「心の中の敷居を低くして」「一歩下がって、補完役として」でした。
  • 経験を大切にしながらも、経験だけに頼らず、何歳になっても、「スキルを棚卸し、変化に併せてアップデートする」等、学び続ける姿勢の重要性を意識される方が数多くいました。
  • 65歳からの再就職活動の厳しさに改めて驚かれ、65歳以降の人材も偏見なく受入れ、活用する企業や社会風土を切望される方が存在しました。
  • 今後、企業が「中高年社員の活性化対策」を検討する上では、土台である「人事制度」の見直しのみならず、上記のような働く当事者側のモチベーションや意識にも着目した総合的な取組みを進める
    ことが、シニア社員活性化の成否を握っているのではないでしょうか。
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