第3回 メンタルケアやストレス軽減のためのマインドフルネス
「星和 Career Next(公開セミナー)」本年度最後となる6回目では、人材育成と健康経営の両面から注目を集めている「マインドフルネス」の効果・効用と実践方法を、臨済宗建長寺派 林香寺住職でRESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長の川野泰周先生よりご講演いただきました。
ご講演前から「星和HRインフォメーション(メールマガジン)」では川野先生の集中連載を4回にわたって配信中です。 3回目は、ストレスが原因で発生する様々な心身の不具合の予防や治療に役立つマインドフルネスについて解説していただきます。 |
仕事に活かす「マインドフルネス」 マインドフルネスで心理的安全性を高める ■日 程:2023年2月22日(水) 13:30~15:00 ■開催方式:オンラインライブ配信(Zoom) ■講 師:第1部 川野泰周氏/第2部 古畑克明 ■定 員:300名 ■主 催:株式会社星和ビジネスリンク(東京都港区芝4-1-23 三田NNビル4F) |
現在、マインドフルネスは世界各国の医療現場で取り入れられ、その効果が実証されています。中でも期待されているのが、薬に頼らないメンタルケア効果です。
うつ病は、症状が緩和したあとも再発を繰り返すリスクが高いことが知られていますが、イギリスのオックスフォード大学の研究によると、マインドフルネスをベースとした認知療法を行うことで、うつ症状の再発を抑制できることが分かりました。しかも、その再発抑制効果は、抗うつ薬を用いた治療よりもわずかながら上回ることが判明したのです。

イギリスのエクセター大学の研究でも、うつ病の再発抑制において、マインドフルネスを用いた治療は薬物治療と同等の高い効果があることが確認されました。さらに同研究では、うつ状態が重度であるほど、マインドフルネスによる治療が高い効果を示すことも判明したのです。
最近では、国内でもマインドフルネスによる瞑想を実践する心療内科は増加傾向にあり、うつ病や不安障害の改善を目指す臨床療法の一つとして定着しつつあります。もちろん、薬物療法はうつ病の症状が重い時期や、発症早期には大変有効であり、積極的な活用が推奨されていますが、マインドフルネスを活用した認知療法は、うつ病の再発予防に大きな力を発揮する治療法として注目を集めているのです。
また、日常的なストレスに対しても、マインドフルネスは有効です。ストレスによって引き起こされる心身の症状は様々です。

その中でも現代人に多いのが、不眠でしょう。厚生労働省の調査では、日本人の5人に1人が「睡眠で休養がとれていない」「不眠がある」と答えています(厚生労働省情報サイトe-ヘルスネット※)。まさに、不眠症は国民病ともいえるものです。
ストレス過多な生活をしている人は、自律神経が常に緊張モードの「交感神経」になっているため、休息モードである「副交感神経」への切り替えが難しくなりがちです。そのため、神経が常に休まらず、スムーズな入眠や深い眠りを得ることが難しくなってしまうのです。
こうしたストレスを起因とする不眠に対して、一部の睡眠専門クリニックではマインドフルネスによる瞑想を治療に取り入れることで効果を上げています。とくに呼吸瞑想など、深い呼吸を繰り返すことで、交感神経から副交感神経への切り替えがスムーズに行えるようになります。また、呼吸へ集中することで入眠前のネガティブ思考にストップをかけ、不安感を軽減させることが、睡眠の改善につながります。
実際に、マインドフルネスによる呼吸瞑想が不眠を改善することは、科学的にも実証されています。

アメリカの国立精神衛生研究所とコロンビア大学の研究チームが、ストレスのほか、PTSDや病気への不安を伴う不眠症に対してマインドフルネスプログラムを行った研究論文を分析したところ、睡眠時間の延長や熟睡感の増加、睡眠満足度などが向上する効果があることが確認されました。
つまり、様々な要因を持つ睡眠障害において、マインドフルネスによる呼吸瞑想は有効に働くということです。
睡眠薬には依存性や転倒リスクの増大、一時的な認知機能低下のリスクを指摘する声もあり、安易な服用は避けるべきとされています。不眠症状が現れた時の対処として、まずは副作用の心配のないマインドフルネス瞑想を試みることも選択肢の一つとなるでしょう。また、ストレス過多な出来事が続くことで、イライラとした感情が渦巻き、人や物に当たってしまう…という人も少なくありません。そのために、仕事やプライベートの人間関係に悪影響が及ぶこともあるでしょう。そんな“ネガティブ感情の連鎖”を、マインドフルネスによる瞑想が断ち切ってくれることが、昨今の研究で明らかになりました。
筑波大学が行った実験によると、37名の大学生に1週間のマインドフルネス瞑想を行ってもらったところ、「怒りの反すう傾向(怒りが伴うネガティブ体験を繰り返し思い出す傾向)」が低減することが確認されました。同時に、瞑想の前後には、ネガティブな気分が改善されることも分かっています。
不安や落ち込み、無気力といったうつ症状に加え、不眠やイライラといったストレス症状に対して改善効果が期待できるマインドフルネスは、ストレス過多な現代人にとっての常備薬ともいえるでしょう。
【筆者略歴】 川野泰周(かわの・たいしゅう) 臨済宗建長寺派 林香寺 住職 1980年横浜市生まれ。 国内初のマインドフルネスのための通信教育講座「マインドフルネス実践講座」(キャリアカレッジ・ジャパン)の監修を務める。NHKラジオ「ラジオ深夜便」、TBSラジオなど、メディア出演を通してのマインドフルネス普及活動にも取り組む。著書・共著・監修多数。 【著書】
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◎川野泰周氏にご監修いただいたeラーニングプログラム「キャリア羅針盤~仕事に活かすマインドフルネス」を弊社Webサイトで詳しく紹介しています。
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