第2回 情報社会における脳疲労とマインドフルネス
「星和 Career Next(公開セミナー)」本年度最後となる6回目では、人材育成と健康経営の両面から注目を集めている「マインドフルネス」の効果・効用と実践方法を、臨済宗建長寺派 林香寺 住職でRESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長の川野泰周氏よりご講演いただきます。 ご講演に先立ち「星和HRインフォメーション(メールマガジン)」では川野氏の集中連載を4回にわたって配信中です。 2回目は、「マルチタスク」が日常化した生活で疲労した脳の「生産性」と「創造性」を回復させる「マインドフルネス」の効用についてお話しいただきます。 |
仕事に活かす「マインドフルネス」 マインドフルネスで心理的安全性を高める ■日 程:2023年2月22日(水) 13:30~15:00 ■開催方式:オンラインライブ配信(Zoom) ■講 師:第1部 川野泰周氏 第2部 古畑克明 ■定 員:300名 ■主 催:株式会社星和ビジネスリンク(東京都港区芝4-1-23 三田NNビル4F) |
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朝起きたらすぐにスマホでSNSをチェック。ネットニュースを読みながら通勤し、パソコン作業をしながらスマホを時々いじりつつ、仕事をこなす。帰宅後は、動画コンテンツを見ながら食事をとり、歯を磨いているときも入浴中もスマホでSNSを見て回る――そんなライフスタイルを過ごしている方は、多いことでしょう。
そんな情報漬けの毎日を送る現代人に、今、急速に増えているのが「脳疲労」です。
複数の作業を同時に行う「マルチタスク」は、現代人にとってはすでに当たり前の日常となっていますが、実は脳にとっては大変なストレス。本人の意識は同時進行でも、脳にとっては異なる作業と情報を処理するために、目まぐるしく注意の切り替えが高速で行われているのです。そのため、マルチタスクは脳にとっては大変な負荷がかかることになります。
この過活動が続くと、人が注意を向けるときの脳のエネルギーである「注意資源」が枯渇し、「脳疲労」を起こします。さらに、複数のことを同時に処理するマルチタスクを行うとき、脳は「デフォルト・モード・ネットワーク」という回路を働かせます。このモードになるとき、脳は多大なエネルギーを消費することが分かっています。
この2重のエネルギー消費によって、現代人の脳は過剰な疲労状態に陥っている……というわけです。
脳疲労を起こしたとき、どんなデメリットが起こるのかというと、記憶力が低下したり、感情のコントロールができなくなったり、頭の回転が停滞したり……ひどい場合には、落ち込みや無気力、不安感の増大といった、うつ症状を起こすことも。
また、だるさや胃腸の不調、めまいや頭痛、睡眠障害など、身体症状として現れるケースも少なくありません。いずれにしても、これらの症状で仕事や生活を送る上で支障が出てくると、脳疲労がピークにきているサインといえるでしょう。
この脳疲労をケアする効果が高いものとして、マインドフルネスが今、注目を集めています。脳を疲れさせるマルチタスクの対極にあるのが、〝今、この瞬間〟に意識を集中させる、シングルタスクのマインドフルネスであるといえるでしょう。
マインドフルネスはあれこれ考えずに〝今、この瞬間〟の体験に注意を向け、評価をせず、とらわれのない状態で観る状態を指します。マインドフルネスの状態になると得られるのが「アウェアネス(気づき)」と「アクセプタンス(受容)」です。自分の内外の情報をキャッチしやすくなり、その情報に対して思い込みやレッテルをはることもなく、ありのままに受け止めることができるようになるのです。
マインドフルネスの状態にあるとき、脳はあちこちにさまよっていた状態から〝今、この瞬間〟に集中するシングルタスクに引き戻され、過活動状態からようやく解放されます。
脳はひとつのことに集中させると、疲労しにくいことが科学的にも明らかにされています。あれこれと意識の切り替えを目まぐるしく行っていたマルチタスク脳をいったんリセットし、シングルタスクで鎮静化させることで、疲れた脳を休ませることができるのです。
マインドフルネス状態にするためには、様々な方法がありますが、最も基本的なものとして、呼吸瞑想があります。自宅であれば、あぐらやソファに座った姿勢で、仕事中であれば椅子に座った状態で、自らの呼吸に集中する時間をとるとよいでしょう。
呼吸瞑想は、長時間必要というわけではありません。30秒でも、1分でも、できるときにできるだけ行うのが大切です。
ある企業では、1日3回のごく短時間の呼吸瞑想を行うだけで、4週間後には幸福感が上がったり、不安感や疲労感が軽減したり、集中力が向上したりといった効果が確認されました。
また、呼吸瞑想以外にも、「ひとつのことに集中する」ことで、マインドフルネスの状態に導くことは可能です。
有名な禅語に「動中の工夫は、静中に勝ること百千億倍す」というものがあります。これは、「じっと座って瞑想する坐禅だけが禅の修行ではなく、経を読むこと、畑を耕すこと、掃除をすることもすべて修行であり、瞑想となる」という意味です。
歩いているときに足の裏が地面をとらえる感覚に集中したり、お茶を飲むときにその香りや味に感覚を集中させたり、文字を書いたり、絵を描いたり、花を生けたり、料理をしたり……それらもすべて、意識を集中させて行うことで、自分をマインドフルな状態に整えることができる「瞑想」となるのです。
また、脳疲労軽減のためのもう一つの具体的な一手として、「独り言瞑想」や「ひとこと日記瞑想」もおすすめです。
人は意外と、自分自身の疲れや本当に望んでいることに気がつかないものです。内なる自分に「気づく」ためにも、言葉でアウトプットしてみることが、有効です。静かに目を閉じ、しばらく呼吸瞑想を行って心を落ち着かせた後、思うままに言葉を口にしたり、文字として書き出したり。それだけで、心がスッと軽くなり、凝り固まっていた脳の疲れもふわりと和らいでいくでしょう。
情報過多社会に生きる現代人の新しい健康習慣として、マインドフルネスの状態になるための呼吸瞑想、独り言瞑想、ひとこと日記瞑想を取り入れて、脳疲労を軽減、予防していきましょう。
【筆者略歴】 川野泰周(かわの・たいしゅう) 臨済宗建長寺派 林香寺 住職 1980年横浜市生まれ。 国内初のマインドフルネスのための通信教育講座「マインドフルネス実践講座」(キャリアカレッジ・ジャパン)の監修を務める。NHKラジオ「ラジオ深夜便」、TBSラジオなど、メディア出演を通してのマインドフルネス普及活動にも取り組む。著書・共著・監修多数。 【著書】
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