第1回 マインドフルネスの基礎知識
「星和 Career Next(公開セミナー)」本年度最後となる6回目では、人材育成と健康経営の両面から注目を集めている「マインドフルネス」の効果・効用と実践方法を、臨済宗建長寺派 林香寺 住職でRESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長の川野泰周氏よりお話しいただきます。 公開セミナーでのご登壇に先立ち、川野氏によるコラムを4回にわたって連載いたします。 第1回は「マインドフルネス」を正しく実践していただくための基礎知識をお話しいただきます。 |
仕事に活かす「マインドフルネス」 マインドフルネスで心理的安全性を高める ■日 程:2023年2月22日(水) 13:30~15:00 ■開催方式:オンラインライブ配信(Zoom) ■講 師:第1部 川野泰周氏 第2部 古畑克明 ■定 員:300名 ■主 催:株式会社星和ビジネスリンク(東京都港区芝4-1-23 三田NNビル4F) |
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近年は、ビジネスシーンや医療の現場で「マインドフルネス」という言葉がすっかり定着しました。企業は人材育成のための研修として、医療機関はメンタルヘルス向上のための心理療法として、確かな成果があるものとして活用されています。とはいえ、「マインドフルネス」とはそもそもいつ、どこで生まれ、どんな効果があるのか?についてはっきりと認識しているという方は少数派でしょう。そこで今回は、マインドフルネスを理解するための基礎知識をお伝えしていきましょう。
そもそも、マインドフルネスのルーツは仏教にあり、瞑想の実践によって心に「気づきと受容」が育まれた状態のことを指しています。「気づく力」と「受け容れる心」を兼ね備えた生き方、健やかに生きるための智慧、「禅」やブッダの教えを、科学の目で紐解いたものなどと表現されます。
ブッダが悟りを得てから行った最初の説法に、人の心を苦しみから解放するために大切な八つの要素「八支正道」があります。この七番目の「正念(しょうねん)」を英語で表現した概念こそが、「マインドフルネス」です。「Mindful=意識している」と「ness=状態」を合わせて、「意識している状態」として言い表しました。簡単に言うと、「あれこれ考えずに、ただ目の前のことに集中している状態」のことを指しています。
〝今、この瞬間〟に体と心が感じていること、頭の中に浮かんでいる考えに意識を向けて、自分の解釈を介さずに、ありのままを観察する。それが、「マインドフルな状態」、つまりマインドフルネスなのです。その状態に至るために、呼吸瞑想をはじめとしたさまざまな方法が実践されています。
現在、明らかになっている効果は、次図のようなものです。
このマインドフルネスを世界的に認知させたのが、マサチューセッツ大学医学部の分子生物学者である、ジョン・カバット・ジン教授でした。同氏はマインドフルネスがもたらす精神と身体への影響について科学的に研究し、1979年に「マインドフルネスストレス低減法」を開発しました。うつ病の再発防止などの効果が確認されている同メソッドは、薬に頼らない画期的な心理療法として、現在において世界中の医療施設で実践されています。
その後、Google、アップル、Meta(旧Facebook)、マッキンゼーといった名だたる企業が社員のメンタルケア、パフォーマンスアップのための研修として、マインドフルネスを次々に導入しはじめました。日本国内でも同様に、トヨタ自動車、リクルート、パナソニックなどがマインドフルネスを活用した研修を行っています。
なぜここまで、世界中でマインドフルネスが必要とされるようになったのでしょうか? それは、インターネットが当たり前になった現代社会では、〝今、この瞬間〟に集中することが極端に減り、大量の情報のなかで脳がストレスでいっぱいになっていることが大きく影響していると考えられます。
実際に、ハーバード大学のマシュー・キリングスワース博士らが2010年に発表した研究によると「現代人は活動中の50%近くの時間は、目の前のことに集中していない」ということが分かっています。
つまり、現代人は仕事をしているときも、人と話しているときも、頭の中は目の前のことと関係のない雑念でいっぱい…ということです。こうしたマインドフルネスとは真逆の「心がさまよっている状態」を「マインドワンダリング」と言います。
このマインドワンダリングの状態が続くと何が起こるかというと、余計なエネルギーを常に使い続けるために、脳が極端に疲労したり、集中力が低下して仕事や学習のパフォーマンスが下がったりしてしまいます。更に注目すべきこととして、「雑念でいっぱいの状態でいると幸福度が下がる」ということも、キリングスワースらの研究で明らかになったのです。
この現代人の脳のバランスを整えるのが、『今、目の前のことに注意を向ける』状態に導く、マインドフルネスなのです。心がさまよっている状態から、〝今、この瞬間〟に引き戻し、脳が疲労するマインドワンダリング状態をストップさせるリセット法となります。
そのために最も広く実践されているのが、呼吸瞑想です。自然な呼吸に意識を向けることで、マインドフルな状態に心身を整えます。意識を向けるのは、呼吸が強く感じられる鼻腔や、呼吸によって膨らんだり縮んだりする胸やお腹など、どこでもOK。自然な呼吸を繰り返しながら、その呼吸に注意を向けるようにします。
気がつけば、まったく違うことを考えていたり、違うことに意識が移ってしまうこともあるでしょう。それは「瞑想を失敗した」わけではないので、慌てたり、がっかりすることはありません。ただ意識が他へ移っていたことを認識し、それを受け止め、またそっと呼吸に意識を集中させましょう。それを何度でも繰り返しながら、呼吸瞑想を続けます。
瞑想は1日5分でも10分でもかまいません。静かな時間がなかなか取れないならば、通勤時に「歩く瞑想」をすればOKです。このときは、地面に着いたり離れたりする自分の脚の感覚に意識を集中させましょう。
瞑想をするために、時間や場所にこだわる必要はありません。〝今、この瞬間〟に集中しやすい時間と場所を見つけて、自分なりの方法でマインドフルネス瞑想をはじめてみてください。
【筆者略歴】 川野泰周(かわの・たいしゅう) 臨済宗建長寺派 林香寺 住職 1980年横浜市生まれ。 国内初のマインドフルネスのための通信教育講座「マインドフルネス実践講座」(キャリアカレッジ・ジャパン)の監修を務める。NHKラジオ「ラジオ深夜便」、TBSラジオなど、メディア出演を通してのマインドフルネス普及活動にも取り組む。著書・共著・監修多数。 【著書】
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