「人材育成型出向等支援」と「ビジネス人材雇用型副業情報提供事業」の活用

 公益財団法人産業雇用安定センターの事業を紹介する連載の3回目(最終回)となる今回は、人材育成などを目的とする出向支援と、本年(2023年)10月から開始された雇用型の副業情報提供事業について、同センター業務部長の金田弘幸(かなだ・ひろゆき)氏からご紹介いただきます。

◆人材育成型出向等支援
 従来、産業雇用安定センターが取り扱う出向支援は、企業において一時的に雇用過剰となった人材の雇用調整を目的とした在籍型出向を対象としていました。今回の連載1回目(10月25日配信)で紹介した新型コロナ禍での在籍型出向がその典型的な例です。

 一方、出向という我が国特有の人事・労務管理の形態には、雇用調整を目的とするものとは別に、ポジティブな可能性を持つものがあることがセンターによる出向支援の成立事例から見受けられるようになりました。例えば、従業員の能力開発やキャリアアップなどを目的とする出向へのニーズです。センターではこのような事例を「人材育成型出向等支援」として取り組んでいます。

 この「人材育成型出向等支援」は次の2つに大別されます。

◆1.人材育成型出向等支援(1)(人材育成・交流型出向)
 従業員の能力開発や人材育成、特に高度人材の育成により企業力の強化を図る場合や、人材交流を目的とした取り組みにより、企業間の連携強化、新分野への展開のための基盤整備、組織の活性化等を図ることを目的とする出向をいいます。出向後は、元の企業に復帰します。

具体例1


◆2.人材育成型出向等支援(2)(キャリア・ステップアップ型出向)
 従業員自らのキャリア・ステップアップへの主体的な挑戦、自身のキャリアパスやライフプランに合わせた職域拡大、UIJターン等を企業が後押しする出向をいいます。出向後は、元の企業に復帰または出向先に移籍します。
具体例2


◆ビジネス人材雇用型副業情報提供事業
 グローバル化の加速や少子高齢化の進展などにより、近年、日本の終身雇用を前提とした年功序列や職能型の雇用慣行は、大きく様変わりしました。それに伴い、従業員個人の自律的な複線型のキャリア選択や、ライフステージに応じた多様な働き方へのニーズが高まっています。企業も従業員の「副業・兼業」を後押しすることで、従業員の新たなスキルの獲得を核とした新分野展開や企業へのエンゲージメント向上などを期待する傾向もみられるようになってきました。

 センターでは、本年6月から7月にかけて約7,600社に対して「副業・兼業」に関するアンケートを実施しました。回答企業1,054社のうち、従業員の「副業・兼業」を認める企業は、予定も含めて約5割であることが明らかとなりました。
 アンケート結果の概要はセンターHPに掲載しています

 このアンケート結果を受けて、センターでは「ビジネス人材雇用型副業情報提供事業」を本年10月から東京、大阪、愛知でスタートしました。

 「副業・兼業」には、他社から業務を受託して行う形態と、他社に雇用される形態の副業があります。センターが出向・移籍など雇用面での業務に長く取り組んできた特性を活かすことにより、雇用型による副業を希望する人材の情報を、副業を受け入れたい企業に対して提供します。

 具体的には、企業在職者で他の企業に雇用される形態の副業を希望する方(ビジネス人材)にセンターのHPを通じて登録していただきます。そのうえで、人材の受け入れを希望する企業の情報を登録者に提供し、両者での労働時間や賃金などを話し合う面談の場を設定します。両者が納得し合意した場合、労働契約を締結していただき雇用型副業が始まるという流れになります。

 従業員が他社に雇用される形態の副業を在職中の企業が後押しする場合、適切な労働時間や健康管理という点に不安を抱くこともあるかもしれません。このようなことについては、企業が従業員との間で、あらかじめ自社での労働時間と副業先企業での労働時間を明確に決めておくことで不安の解消に繋がります。また、柔軟な雇用は、人材の定着や多様な人材に選ばれる企業となる可能性が高まるなどのメリットもあります。この機会に従業員に対してセンターの「ビジネス人材雇用型副業情報提供事業」をご紹介いただければ幸いです。
「ビジネス人材雇用型副業情報提供事業」のWebサイト

◆おわりに
 これまで3回にわたって産業雇用安定センターの事業、(1)雇用調整の「出向・移籍支援」、(2)60歳以上の求職者のための「キャリア人材バンク」、(3)「人材育成型出向等支援」と(4)「ビジネス人材雇用型副業情報提供事業」について紹介してきました。これらの事業は企業が負担する雇用保険料を原資として厚生労働省から補助金の交付を受けることにより、無料でサービスを提供していることはこれまでお伝えしてきたとおりです。

 企業の皆様には、センターの事業にご関心やニーズがある場合には、センターHPをご覧になっていただくとともに、全国47のセンター地方事務所にご連絡いただければ、センターのサービスについてご案内に上がります。

公益財団法人 産業雇用安定センター


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