マネープランも「自律」の時代!?

 「星和HRインフォメーション」では、今回から3回にわたって、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会常務理事、同特別顧問を歴任された得丸英司氏から、マネープランとキャリアプランの密接な関係についてお話しいただきます。

 得丸氏には、9月8日開催の「星和Career Next 2022第3回公開セミナー」にご登壇いただきます。

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◆本気の「ライフプラン研修」との出会い、28年前の驚き

 「これからの時代は、公務員だからと言っても安泰ではありません。
自分の未来は、自ら切り拓いていくという気概を持って臨んで欲しい。
まずは、一人ひとりが、自分のマネープランをつくることからスタートしたい…」 ある県の警察本部厚生課長は、目を輝かせて私に語ってくれました。

 今から28年前の1994年7月、私が「ライフプラン研修」の企画・講師を受託した時のことです。
この県警では、「マイ・ライフプラン20代」「マイ・ライフプラン30歳」「マイ・ライフプラン 40歳」「マイ・ライフプラン 55歳」というふうに、20代は希望者研修、30歳、40歳、55歳の節目の年齢では全員を対象に実施していました。

 当時はまだ、59歳の社員を集めて退職金や年金請求など一連の「定年退職手続」を説明するだけの内容に、「ライフプラン研修」という名称を付して実施している企業・団体がほとんどだったのです。
いわゆる「なんちゃってライフプラン研修」です。
講師としての私の役割は、「何かいい話をしてください」という研修を主宰する担当者の要求に応えることでしかなく、ほとんどが“基調講演”にとどまっていました。

 そのような時代にあって、この県警はなんと先進的なのだろう…。
話を聞くほどに驚くばかりでした。
そもそも、名称だけでなく、本来の目的を持って、「ライフプラン研修」を実施していました。
年代・年齢ごとにきめ細かく設定されていたことをみても、この県警の”本気度“が伝わってきました。
今では“当たり前”のことですが、若手層からミドル、シニア層に至るまで、ここまで広範囲に実施している企業・団体はほとんどありませんでした。

 なによりも、研修目的が、「警察職員の自律を目指す」ことだというのは、本当に素晴らしいことだと感じました。
まだ「自律」という言葉を使っている人すら、ほとんどいませんでしたから。

◆「マネー」と「キャリア」は両輪だが、似て非なるもの
 その後「ライフプラン研修」が通ってきた道筋は、みなさま方もご存じのとおりです。
研修対象年齢をみると、59歳や58歳など定年直前のシニア層に限られていたものが、50代前半になり、やがて40代や30代などにも広がっていきました。

 ライフプラン研修を定年直前に実施すると、受講した社員のアンケートには、必ずといっていいほど「セカンドライフのお金の話は、もっと早く聞きたかった」というコメントがでてきます。
実は、講師自身も「この話は、この人たちにはもう遅い」というジレンマを感じながら研修をしていたこともありました。

 このような事情から、「もう少し早く実施しよう」ということになって、53歳研修や50歳研修が登場してくるのです。
しかし、アンケートをとってみると、やはり「お金の話はもっと早く聞きたかった」という意見が出て、「じゃあ、45歳研修にしよう」とか「30代からやらなければ」といった具合になってしまうのです。

 実は、ここが「マネーとキャリアの違い」だと思いますが、いかがでしょうか。
私は、これを「有形資産と無形資産の違い」と捉えています。
「キャリア」と比較すると、「マネー」という有形資産の場合、かなり意識して「自分事」として考えなければ、あるいはプランニングの過程で「自己のアイデンティティー」を強く注入できなければ、良いプランができないのです。
たとえ、できたとしても「同年代の一般論としてのプラン」にとどまってしまいます。

 ファイナンシャル・プランニングの教科書には、「プランを立てる前には、ファイナンシャルゴールの設定が重要です」と書いてあります。
しかし、そのゴールを「いつまでに、いくら貯めるんだ」と勘違いしてしまうと、できあがったプランが「一般論」になってしまいます。

 前述のように、どの年代で研修をやっても、「お金の話はもっと早く聞きたかった」という意見が出てくるのは、ファイナンシャルゴールを「ハッピーなセカンドライフ=1円でも多く貯えること」と捉えているためなのです。

例えば、ライフプラン研修で「ファイナンシャルゴールの設定が大切ですよ」と聞いて、「65歳定年時の貯蓄額が1円でも多いこと」がゴール(目標)と考えてしまうと、「マネーの話は、少しでも早く聞かせて欲しい」ということになるでしょう。
当然、「59歳になってから聞いても遅すぎるよ!」ということになります。

 私はいつも「マネープランとキャリアプランは車の両輪」と申し上げています。
しかし「両輪」だといっても、マネーとキャリアが「同質」のものであるという意味合いではありません。
むしろ「異質」と捉えるべきでしょう。
異質だからこそ、補完しあって「両輪」になれるのです。

◆「キャリア自律」を追いかける「マネー自律」
 マネープランの出発点は、「ライフイベント表」と「キャッシュフロー表」です。
しかしこれらを、単に「家計の年間収支と貯蓄残高の推移」を把握するためのツールと“誤解”していないでしょうか。
「車の両輪」の一つとしてのマネープランは、人生を探求する手段でなければなりません。
そして、マネーとキャリアの両方が揃って初めて、現実的な「マイプラン」となるのだと思います。

 最近、キャリアの領域では「自律」がキーワードになっています。
「キャリア形成は会社の仕事。
会社が与えてくれるもの」という従来の考え方が、「キャリアは自分で創るもの、会社は支援者・伴走者」というように変わりつつあり、これを「キャリア自律」と呼んでいます。

 マネープランも同じです。
本来は「自律」が望ましいのですが、雇われている会社員の場合は、労働の対価とはいえ「給与=与えられるもの」というイメージが強いですね。
そこが、自営業などの「自ら稼ぐ」という感覚との違いなのかもしれません。

 キャリアプランとともに「車の両輪」を形成することによって、マネープランにも「自律」意識が芽生えてくるのではないでしょうか。
そうなれば、ファイナンシャルゴールを単に「1円でも多く貯めること」などと捉えてしまうのではなく、「どのように生きるかを実現するため」のマネープランとなるでしょう。
「人生の探求」がゴールとなるのです。

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【筆者プロフィール】
得丸英司氏
得丸英司(とくまる・えいじ)
CFP®

大手生命保険会社で25年にわたり、法人・個人分野のFPコンサルティング部門に従事。
NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会常務理事、 同特別顧問、慶應義塾大学大学院講師、一般社団法人定年後研究所所長を歴任。

◎ 星和ビジネスリンクは、現役世代が定年後の人生を豊かに過ごすための調査研究を行う機関として、「一般社団法人 定年後研究所」を設立しました。
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