心理的安全性を導き出す「言葉」

 心理的安全性の高いチームとは、高いパフォーマンスを効果的に発揮できるチームです。
では、具体的にどんなことをすれば、「心理的安全性」の高いチームになれるのでしょう?
 私がこのように質問されたら「チームで使われている『言葉』から変えていきましょう」と答えるようにしています。「言葉」はチームの心理的安全性をこわしもすれば、つくりもします。あなたのチームで日常的に使われている「言葉」を、この機会に振り返ってみましょう。

●「言葉」には大きく2種類ある
 普段使っている「言葉」には、2種類あります。それは、行動を促す「きっかけ言葉」と、行動を受け止める「おかえし言葉」です。
 次の【図版】のように「きっかけ言葉」を使って相手の行動を促し、その「言葉」をきっかけに相手が起こした行動や結果を「おかえし言葉」で受け止めます。

心理的安全性を創る言葉 心理的安全性とは

 「きっかけ言葉」と「おかえし言葉」をバランスよく使うことが重要で、多くのリーダーは「きっかけ言葉」はよく使うのですが、「おかえし言葉」はメンバーが大きな成果を出したときのみ使われ、アンバランスになっていることが多いようです。

 前回の「HRインフォメーション」で紹介したように、心理的安全性の高いチームとは、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」の4つの因子が高いチームです。つまり、どんな意見でも話すことができて、助けを求めても大丈夫で、挑戦して個性を発揮しても受け入れてもらえるチーム。ということは、「意見を言う」「助けを求める」「トライする」「自分の強みを表明する」という「行動」を増やすことで心理的安全性を高めることができるということです。

 ここからは、心理的安全性の高いチームに近づく、望ましい「行動」を増やすために、「きっかけ言葉」と「おかえし言葉」をどのように使えばいいか、まずはNG言葉から見ていきましょう。

● 「行動」を減らす、「きっかけ言葉」「おかえし言葉」のNG例
 「言葉」が不適切だと、「行動」が増えません。以下のような「きっかけ言葉」や「おかえし言葉」がチーム内で使われていたら、要注意です。

 「きっかけ言葉」のNG例
 進捗が芳しくなくて理由を知りたいとき、「なんで進んでないの?」
 会議の最後に、「他に何か意見ある?」
 トラブルが発生したとき、「なんでもっと早く気づかなかったの?」

 「おかえし言葉」のNG例
 改善の提案が出たとき、「じゃあ、担当としてやっておいてね」
 挑戦が失敗に終わったら、「これ、誰の責任なの?」
 素朴な質問が出たとき、「そんなこともわからないの?」

 これらの言葉は「アイデアを言う行動」や「トラブルを報告する行動」、「挑戦する行動」を減らしていくNG言葉です。

 では、どんな「きっかけ言葉」や「おかえし言葉」を使えばよいのでしょうか。具体的な場面で見ていきましょう。

● 会議を活性化させるための「きっかけ言葉」「おかえし言葉」
「意見を言う行動」を増やしたいときの「きっかけ言葉」

NG:「どんな意見でもどんどん言ってください」
OK:「この場の心理的安全性は私が担保します。発言に対して批判はしません。どんな意見でも言ってください」

 心理的安全性の高い会議は参加するメンバー全員でつくるものです。リーダー(議長)がまずは全員に対してこの場が心理的に安全であることに責任を持つと言い切る(宣言する)ことで、意見が言いやすくなります。

ミスや遅れも共有される場にしたい。「うまくいっていないことを共有する行動」を増やしたいときの「きっかけ言葉」

NG:「なぜうまくいっていないのですか?」
OK:「うまくいっていないことはなんですか?」「どこがうまくいっていないのですか?」

 リーダーからの「なんで (WHY ?)」の問いかけは、メンバーに知らず知らずの内に咎められていると感じさせてしまい、メンバーが委縮して「すみません」しか出てこなくなることが多いのです。うまくいっていない仕事を前に進めるためにも、チーム全体の学びに変えていくためにも、「なんで(WHY ?)」ではなく「なに(WHAT ?)」や「どこ(WHERE ?)」の問いかけに変えることが効果的です。

議論が白熱して自分と相手との間で意見の衝突が起きたときの「おかえし言葉」

NG:「意味が分からないんだけど」
OK:「理解したいから聞くんだけど、もうちょっと教えてくれないかな」

 お互いが話しやすく、対立する意見を含めてさまざまな意見が出せることは心理的安全性を高めていく中で望ましいことです。しかし、意見の衝突が個人対個人の人間関係のトラブルになってしまってはいけません。「健全な衝突」とは、異なる意見の人同士が激しく口論することではなく、そこにいるメンバー全員の意見が表明されている状態のことです。「意味が分からない」というジャッジの言葉ではなく、理解したい前提を伝えて詳しく聞くという「おかえし言葉」で違う意見でも堂々と言える会議にしましょう。

今回は、「会議を活性化させるための言葉」を紹介しました。次回は「1on1が楽しみになる言葉」と「リモートワークの中でも心理的安全性を高くするポイント」についてお届けします。

【筆者略歴】
原田 将嗣 (はらだ・まさし)
株式会社ZENTech シニアコンサルタント
株式会社Eachway 代表取締役
コーチ/心理的安全性認定ファシリテーター
前職スターツグループでは注文住宅営業・マネジャー、人事部門を経験。トップ営業マンに贈られる金賞受賞。
後に、ホールディング会社のスターツコーポレーションでコンプライアンス部門を経験。グループ社員約8,000名への教育・啓発活動に携わる。
国際コーチング連盟認定マスターコーチの谷口貴彦氏に師事しコーチングを学ぶ。
2020年4月、プロコーチとして起業。パーソナルコーチ、企業研修コーチに加え、スポーツコミュニケーション アドバイザー&コーチとしても活動。
ZENTechでは企業へ心理的安全性を浸透させるための組織開発・育成計画の企画提案、研修講師、マネジャー向けコーチングを担う。

【著書】
『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』
2022年8月
原田将嗣〈著〉、石井遼介〈監〉
飛鳥新社
四六判並製・306頁
定価1,650円(税込)

原田将嗣 著書

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