第2回 健康に働き続けるために

 来る1月19日、本年度5度目の開催となる「星和Career Next」では、行動科学マネジメント研究所所長の石田淳氏をお招きし、中高年社員のキャリア自律において最大のポイントともいえる「行動」についてお話をいただきます。

星和 Career Next 2022 (公開セミナー)
キャリア自律 最大のポイントは「行動」

■日  程:2023年1月19日(木) 13:30~15:20
■開催方式:オンラインライブ配信(Zoom)
■講  師:
 第1部 石田 淳  行動科学マネジメント研究所所長
 第2部 古畑克明 (株)星和ビジネスリンク セカンドキャリア支援事業部門ディレクター
■定  員:300名
■主  催:株式会社星和ビジネスリンク(東京都港区芝4-1-23 三田NNビル4F)



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 前回は「人生100年時代」の「働き方」についてお話していただきました。連載2回目の今回は、充実した人生を歩むための必須要素、「身体の健康」についてお話しいただきます。何をやっても長続きしない方、必読です。

◎ 現在の悪習慣が老後をダメにする

 寿命が100歳まで延びて、80代になってもまだまだ働かなければならない時代……。
こうした時代の到来に向けて40代、50代が考えなければならないのが、これからも長く働き続けるためのスキルを磨くこと、新たな働き方を学び直すこと。前回そんなお話をしました。

 ただ、長く働き続けるためには、仕事のスキル以前に前提条件があります。それは「健康であること」。40代、50代でスキルを磨いたとしても、それが活かせない状態、すなわち健康を害し、身体や頭が動かない状態になっていては何の意味もありません。

 「健康寿命」という言葉があります。単に「寿命」といえば、それは「この世からいなくなるまでの年月」のことを指しますよね。それに対して健康寿命とは、介護などを必要とせずに自立して暮らせる年月、いってみれば「元気にまだ働ける」という期間です。しかし、健康寿命を終えると……「寝たきり」「介護なしで生活できない」「働くことができない」という期間が待っています。

 たとえば、平均寿命が80歳ほどであれば、健康寿命を終えてからのそんな期間も、それだけ短いものになります。しかし人生100年時代となれば、その期間が延々と続くことに。

 今、私たちは「長く働き続けるために健康寿命を延ばす」ということが大きな課題となっているわけです。健康管理に気を配り、元気に働ける身体を維持していかなければならないのです。

 私の著書『人生100年時代のマネジメント』(祥伝社新書2017年)の中でも紹介していますが、生活習慣病の権威、岡部正医師も「70歳を過ぎてからの健康状態を決めるのは50代の過ごし方なのだが、50代ではまだ自覚症状に乏しいため、その重要な時期を無為に過ごしてしまう」と指摘しています。

 「まだ体が動くから平気だろう」と過信せず、「人生100年時代」に備え、今から健康習慣を身につける必要があるのです。

◎ なぜ習慣は身に付かないのか?

 健康習慣といえば、「運動」「食事」「生活のリズム(睡眠等)」といったことの改善が思い当たるでしょう。ここではそれらについて「どんな方法が効果的なのか?」は解説しませんが、そもそも「新しい習慣を身に付ける」ということに対して、苦手意識がある方も多いのではないでしょうか? 「毎日運動するぞ」と固く誓ってやり始めても、長続きしない。いわゆる三日坊主で終わってしまうという話はよく聞きます。

 良い習慣が身に付かないことに対して「自分は意志が弱いから」「面倒くさがりだから」などと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、実は習慣を身に付けることと、意志の力や性格など内面の問題は、あまり関係がありません。

 そもそも、人が行動を繰り返すのはなぜか? それは簡単にいえば、自分の行動が自分に『望ましい結果(メリット)』をもたらすからです。逆にいえば、行動の結果が『望ましくない結果(デメリット)』であれば、人は行動を繰り返さないということでもあります。
行動科学では、こうした「人が行動するしくみ」を次のような「ABCモデル」と呼ばれる概念でまとめています。

A(Antecedent)先行条件……行動を起こすきっかけ、行動する直前の環境
B(Behavior)行動……行為、発言、ふるまい
C(Consequence)結果……行動によってもたらされるもの、行動した直後の環境変化

 人が行動を起こすには、行動のための条件、つまり「なぜ行動を起こすのか」という理由があります。その条件を満たすために「行動」を起こし、行動の後には「結果」が生まれ、その「結果」がまた次の行動を促す(あるいは促さない)のです。

 たとえば、健康習慣として「毎朝のランニング」を決意し、「よし、やるぞ!」と気合いを入れて、3㎞走ることを目標にしたとします。しかし、普段から運動をしていない人にとって、3㎞走ることはとても苦しいことです。眠いけれど早起きをがんばり、ひどく苦しい目に遭い、挫折感を味わった……。まさに行動の結果が望ましくないものとなったわけです。これでは、その後行動を継続することはできません。これは意志の弱さだとか根性の無さなどということではなく、人間の行動原理として当然のことなのです。

◎ 目標は「ちょっとずつ」でいい

 では、行動を継続させるためにはどうすればいいか? そう、行動の結果を「望ましいもの」にすればいいのです。

 そのためにおすすめなのが、「スモールゴール」の設定です。いきなり大きなゴールを目指すのではなく、小さな目標をクリアしていき、その都度望ましい結果を得る。それがまた次の行動につながり、継続され、やがて定着し習慣となる、というしくみです。ごく簡単にいえば「ちょっとずつやる」ということ。

 このスモールゴールで得られる「望ましい結果」とは、「達成感」と「自己効力感」、つまり「自分はできた!」「自分はできるんだ!」という満足感です。

 たとえば、私はある雑誌の企画で、40代になってからフルマラソンにチャレンジしました。それまで運動経験のなかった私がスポーツトレーナーの指導によって決めた最初のスモールゴールは「週に2回、30分だけ歩く」というものでした。もちろんこれなら難なくこなせます。そして次は「30分のうち、5分だけ走る」、次は「30分のうち、10分だけ走る」と、次々とスモールゴールをクリアし続け、やがては走ることが習慣となり、フルマラソンの完走のみならず、過酷なウルトラマラソンやトライアスロンなど、数々の競技に参加し、ついに「サハラ砂漠横断マラソン」などの世界的な大会にまで出場するようになったのです。

 スモールゴールをクリアするごとに感じる「達成感」と「自己効力感」が、次の行動を後押しします。健康習慣を身に付ける際は、気負って大きな目標を設けるのではなく、できることを、ちょっとずつやってみる、を心がけてみてください。

【筆者略歴】
石田 淳(いしだ・じゅん)

行動科学マネジメント研究所所長
株式会社ウィルPMインターナショナル代表取締役社長兼最高経営責任者
米国行動分析学会(ABAI)会員
日本行動分析学会会員
日本ペンクラブ会員
日経BP主催『課長塾』講師

 米国のビジネス界で大きな成果を上げる行動分析を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジ。
「行動科学マネジメント」として確立。グローバル時代に必須のリスクマネジメントやコンプライアンスにも有効な手法と注目され、講演・セミナーなどを精力的に行っている。著書多数。

【著書】

無くならないミスの無くし方 ~成果を上げる行動変容
『無くならないミスの無くし方 ~成果を上げる行動変容』
石田 淳〈著〉
日経BP社〈刊〉(2021年12月

定価 1,650円(税込)
「やりたいこと」を全部やる技術:行動科学で最高の人生をつかむ43の方法
『「やりたいこと」を全部やる技術:行動科学で最高の人生をつかむ43の方法』
石田 淳〈著〉
実業之日本社〈刊〉(2021年10月)
定価 1,540円(税込)
いつまでたっても動けないあなたが「すぐやる人」に変わる100の言葉
『いつまでたっても動けないあなたが「すぐやる人」に変わる100の言葉』
石田 淳〈著〉
永岡書店〈刊〉(2021年6月

定価 1,320円(税込)



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