「セルフブランディングの極意~本当にできる自分を再発見」
明治大学大学院 野田稔教授によるコラムの2回目。今回のテーマは、「セルフブランディングの極意~本当にできる自分を再発見」です。 *野田教授には、6月20日開催の公開セミナー(第1回 星和 Career Next2023)にご登壇いただきます。 |
◆“Will・Must・Can”をもう一度考えてみる
キャリア形成について考えるとき、よく使われる言葉に、“Will・Must・Can”があります。
みなさんも、この3つについて考えてみてくださいと言われたことがありませんか?
私は、これらの言葉を以下の順番で考えるべきだと伝えています。
・“Can”=自分は何ができるのか
・“Must”=自分は何を成すべきか
・“Will”=自分は何がしたいのか
この“Can・Must・Will”の考え方には続きがあって、自分の視点だけでなく、会社から見たときにどうか?という視点も大切になってきます。
会社が、ある社員のキャリアを考えるとき、
・「この人は何ができそうか」=「期待」(これは第1回でもお話した期待です。)
・「この人の制約条件は何か」=「限界」(この人の限界はどのあたりか。)
・「何がしたい人なのか」=「(本人の)希望」(会社にどれくらい伝わっているのか。)
この3点は最低限考えるべきなのですが、ほとんどの場合、会社は個人の“Can・Must・Will”を知りませんし、そのようなことを考えてもいません。
ですから、“Can”と「期待」、“Must”と「限界」、“Will”と「希望」、のマッチングを構成要素にして、「職場」と「仕事」と「自分」の関係性を端的に語るストーリーを作り上げることがセルフブランディングなのです。
みなさん、研修などでは“Will”についてはたくさん語りますが、これだけでは、あなたの価値は会社に伝わりません。
◆なぜ“Can”から考えるのか
“Can・Must・Will”を考えるとき、会社から給料をもらって働く以上は、“Must”を第一に考えるべきという人もいます。あるいは自治体などが主催しているキャリアアップセミナーなどでは“Will”を先頭に考えると伝えることもあります。
でも、多くの人は自身の“Can”を知りません。ですから、この“Can”について考えることからはじめていただきたいのです。
そもそも、私は多くの人は、“Will”について考えていないと思っていますし、考えていても、それほど重要なことだと捉えていないのではないかと思うのです。 もし、“Will”のことを真剣に考え、それが明確になっていれば既に率先してやっているはずですからね…。
多くの人の頭の中は、“Must”がとても大きくて、「住宅ローン」とか「子供の養育」とか、「家族の期待」とか…いろいろなプレッシャーに邪魔されて、“Will”については、ほとんど考えられていません。
では、“Can”はどうか…、今の仕事で使っている能力くらいしか思い浮かばない方が多いかもしれませんね。
そんな中で“Will”を探せと言われても、それは夢の中の話になってしまいます。ですから、私は先に“Can”を見つけましょうと言っているのです。
みなさんは、この“Can”というものを、仕事をするうえで得た能力として、小さく捉えておられますが、“Can”はもっと広いところで捉える必要があります。
私は“Can”の話をするとき、「原点の“Can”」というお話をしています。
「行動遺伝学」という学問をご存知ですか。なんだか、身もふたもない言い方になってしまいますが、この学問によると、遺伝的要素(才能)が欠けているところでどれだけ努力をしても、成功は難しいそうです。そして、年齢を重ねるほど、環境要因よりも遺伝要因が能力に強く働くというのです。
そもそも、遺伝的要素が全くないところでの努力は、継続ができません。しかも、遺伝的要素がある人とない人では、スタートラインが随分と違います。
自分が遺伝的に持っているアドバンテージを見つけて、それを仕事に活かすというのがいちばん合理的な考え方です。それが「原点の“Can”」です。
人は、10歳から15歳くらいまでの間に遺伝的要素が出現するといわれています。それが「原点の“Can”」です。大好きで没頭していたこと、得意だったこととか、そんな形で出現するそうです。
しかし、多くの人は若いころに熱中していたことや大好きだったことを封印してしまいますね…。
私がある人の“Can”を見つけるときには、まずその人の自分史の分析からはじめます。これは、「原点の“Can”」を徹底的に調べるための作業なのですが、その方法は、6月20日のセミナーの中でお話ししますね。
今後日本では労働力が大幅に不足します。そのため私は、ミドルシニアが持っている可能性をできる限り広げるためのヒントとしてこの「原点の“Can”」の考え方を知っていただきたいと思います。
【筆者略歴】 野田 稔(のだ・みのる) 明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科 教授 1981年一橋大学商学部卒業 株式会社野村総合研究所入社。 著書:『組織論再入門』(ダイヤモンド社)、『中堅崩壊』(ダイヤモンド社)、『二流を超一流に変える「心」の燃やし方』(フォレスト出版)、『野田稔のリーダーになるための教科書』(宝島社)、『あたたかい組織感情』(ソフトバンククリエイティブ)など多数。 |
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