「ミドルシニアに期待されるキャリア」
本号より、長年にわたりミドルシニアの研究を続けられている 明治大学大学院 野田稔教授のコラムをお届けします。連載1回目となる今回のテーマは、「ミドルシニアに期待されるキャリア」です。 *野田教授には、6月20日開催の公開セミナー(第1回 星和 Career Next)にご登壇いただきます。 |
私はこれまで「キャリア成長論」という考え方を発信してきました。
一般的な「キャリア」の定義では、過去を見ています。それまで働いてきた過去の軌跡です。しかし、私は、キャリアは未来志向でないと意味がないと考えているため、キャリアに「働くことを通じて、自らの志を実現する成長のプロセス」と新たな定義づけをしています。
この定義では、「働く」ということが重要で、あえて「仕事」としていない部分が肝になります。長野県の伊那というところでは「仕事」と「働く」を明確に分けて使っている人たちがいます。
「仕事」とは、事に仕えてお金もうけをすること。
「働く」とは、人が動いて「側(はた)」を楽にしてあげること。
「仕事」も「働く」の一部なのですが、「働く」というのは、お金儲けだけではなく、家事労働や地域との関わり、ボランティア活動などすべてを含んでいるのです。
働くというのは、“Work”と“Life”と“Social”をまとめたものと捉えることができます。
その「働く」を通じて、どう生きて何を達成するのかがキャリアだと私は考えています。
ただし、そのためには、学び続け、成長し続けることが必要です。ですから、キャリアには継続的な努力が重要なのです。
ここで、前提になるのが、「自分は成長できる」という自分の可能性を信じ続けることです。ただ、自分の可能性を信じ続けることは簡単なことではありません。信じ続けるには、周囲の期待が必要です。
しかし、周囲の期待がないと努力や成長が続けにくいとなると、独りではキャリアは完結しないということになり、「キャリア自律」は実現できないということになってしまいます。
そこで私は、キャリア自律に成功している人を対象にインタビューをしてみました。すると、大変面白いことがわかったのです。それは、キャリア自律に成功している人は、周囲から期待を集めるのが上手だということです。周囲の人が期待していることを少しだけ先取りしてみたり、期待に応える行動をしてみたりする。そうする間に周囲からの期待はより大きくなるのです。周囲からの期待が大きくなれば、自然に新しいポジションが与えられ、そのことへのサポートも受けやすくなる。もちろん、本人も前向きになって、それを糧にまた頑張れるような気分になるわけです。
ですから、キャリア自律を成功させるためには、周囲からの期待を集め続けることがとても大切なのです。
ただ、周囲の人からの期待が大きくなれば、ハードルも高くなります。
40代になると、会社の中でのプロフェッショナルという肩書きだけでは「少し物足りない」という評価を受けてしまうかもしれません。また、50歳になっても30代と同じような働き方をしていては、芳しい評価を得ることは難しくなります。
ある程度年齢を重ねたら、自分の枠を超えて、部下や同僚、時には上司をうまくリードしながら仕事を進めていくスキルを身に着けることが必要で、40~50歳はリーダーシップを身につけ、それを発揮しながら「働く」時期です。
「主体的に他人を巻き込んで事を成すという働き方ができているか?」あるいは「指示待ち人間になっていないか?」ということです。
そのために、会社は40代を迎えた社員にチャンスを与えなければいけないのです。少々消極的でも、何かの仕事のリーダーに抜擢することで化ける人もたくさんいますから。
そして、40~50歳の10年間を経た年代に期待されているのは、席を譲るということです。
いつまでも、地位にしがみつくのはやめた方がいい、周囲の人はあなたが席を立ってその席を後進に譲ることを期待しています。
ただ、席を譲った後、その場に座り込んでいてはいけません。
上手にキャリアを積み上げてきた人は、自分のやるべきことを自分で決めることができるはずです。自分で決めた座席に移ること、それが席を譲るという事です。ですから、「〇〇さんが□□を始めたんだって(すごいね)!」と言われるようになるべきなのです。
ミドルシニアの年代になったら、自分の仕事は自分でつくる!大きな仕事である必要はありません。私は、ミドルシニアの皆さんには、これまでの経験を活かし、「小さな企て屋さん」「小さな改革屋さん」になる努力をおすすめしています。
そのためにも、会社の職域開発は今後重要なミッションとなります。ミドルシニアが彼らの能力を発揮しやすい小さなプロジェクトを数多くつくることが、会社の成長への布石となると考えています。
40~50代は会社員としていちばん活躍が期待される年代でもあります。会社としては、よそ見をしないで、今の仕事に専心してほしいという考えがあることもわかります。ただ、それは、既存事業の前途が洋々としていて、従来の運営に没頭していても事業が拡大していく環境であったときの話です。現実は多くの会社で既存事業の賞味期限が切れかかっていたり、既に切れていたりしていませんか。
社会人としての経験を積んで、気力も体力も持ち合わせている年代に求められることは、ルーティンワークではなく、次のビジネスが何かを考え、それを実践し、次世代を担う若い世代の席を用意することです。
もちろん、その新しいビジネスが何かはわかりません。わかっていたら私自身が先にやっています。
それを考えるのが、ミドルシニアの役割でキャリア自律なのだと私は思います。
【筆者略歴】 野田 稔(のだ・みのる) 明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科 教授 1981年一橋大学商学部卒業 株式会社野村総合研究所入社。 著書:『組織論再入門』(ダイヤモンド社)、『中堅崩壊』(ダイヤモンド社)、『二流を超一流に変える「心」の燃やし方』(フォレスト出版)、『野田稔のリーダーになるための教科書』(宝島社)、『あたたかい組織感情』(ソフトバンククリエイティブ)など多数。 |
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