主体的なキャリアを作る人の習慣(2)
(ネットワーキング行動)
星和HRインフォメーションでは、「変化の時代のキャリア自律」について慶應義塾大学SFC研究所 上席所員の高橋俊介氏にインタビューを行いました。 ここでは、そのインタビューの中で特に興味深かった大規模調査から見えてきた「主体的にキャリアを作ってきた人とその習慣」をメルマガ用に編集しお届けいたします。 二回目となる今回のテーマは、「ネットワーキング行動」です。 |
ここでいう「ネットワーク」とは、人間関係のことで、「ネットワーキング行動」は人間関係に対する投資や、その布石となる行動を習慣的に行うことをいいます。
「主体的なジョブデザイン行動」とは、主体的にジョブストレッチ(いまの仕事を広げる)し、ジョブクラフティング(仕事自体を作る)を行い、リフレーミング(仕事を再定義する)する中で、主体的に学びを連鎖させることによりキャリアを膨らませていくのが基本的な考え方です。
しかし、人生では何回か思い切ってキャリアを振る、つまり思い切ったジョブチェンジや、キャリアチェンジといった経験をせざるを得なくなることがありますね。
これをチャンスとして活かすことが大切なのですが、世の中って不公平にできていて、多くのチャンスが得られる人もいれば、全然チャンスに恵まれない人もいるわけです。
このことは個人の実力に結びついている部分もありますが、全てがそうではありません。
クランボルツ理論にもあるように、キャリアは「偶然」の出来事に左右されるわけです。
ただ、そんな中でも良い「偶然」に恵まれる人と、そうでもない人の差こそが日頃の習慣(行動)の差であり、その代表的なものが「ネットワ-キング行動」だということです。
「いつ・どこで・どんな出会いが得られるか」なんてことを、考えてみても先のことは分かりませんが、良い習慣を続けていることで、予期しないチャンスが想定外のタイミングでやってくることがあるのです。
この習慣(行動)は、その確率を高めることにつながるわけですが、保証するものではありません。
社会心理学に関係性資本(社会関係資本)という言葉があります。
そこでは人と人との関係を「閉じている」とか、「開いている」と表現することがありますが、これらのどちらが人脈を広げやすいかというものに、「互酬性の概念」があります。
この概念は二つに分けることができます。
ひとつは、一対一の「特定化された互酬性」、平たく言えば「義理」。
「彼には義理がある」とか「彼らには貸しがある」という考え方です。
もうひとつは、「一般化された互酬性」、
こちらは、「世の中お互い様」という考え方で、こちらは「人情」です。
ある人になにか親切にしたとしても、その人から返礼があるとは限らない、でも世の中は助け合いだよねという考え方です。
物事を合理的に考えすぎると、「特定化された互酬性」、閉じた人間関係に取り込まれてしまいます。
しかし、現在のように変化の激しい時代では一般化された互酬性を前提に、布石をたくさん打つ必要があります。もちろん布石ですから、その全てを活かすことはできませんが、三つにひとつ、五つにひとつでも活かすことができればいいわけです。
長年組織の中で働いていると、どうしても閉じた人間関係に取り込まれてしまいがちですが、皆さんの「ネットワーキング行動」はいかがでしょうか。
8月4日のセミナーでは、クランボルツ理論や関係性資本についても、もう少し詳しくお話しいたします。
次号では、三番目に相関が強かった「スキル開発行動」についてお話しします。
*8月4日(木)開催の星和Career Next 2022 に高橋俊介氏のご登壇が決まりました。
セミナーのお申し込みサイト内にある登壇者インタビューでは、この内容の前段部分についてご紹介しています。
併せてご覧ください。
【筆者プロフィール】 高橋俊介(たかはし・しゅんすけ) 慶應義塾大学SFC研究所 上席所員 1978年東京大学工学部航空工学科を卒業し日本国有鉄道に入社。 |
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