雇用期間の延長、あるいは定年退職制度の廃止に舵を切り始める企業が増えてきました。就労期間が延びるにしたがって、「家族の介護」が組織マネジメント上の問題として顕在化するようになりました。
今回は、「働く世代の介護問題」についてデータを交えながらお伝えします。
企業が抱える介護事情
平成30年度に厚生労働省が行った調査によると、早いケースでは家族が60代後半に差し掛かったころ介護が始まっています。家族が70代から80代になると介護に携わる人は急増し、90代以上ともなるとおおよそ半数が家族の介護をしている状態となります。
1971年の平均出産年齢は27.74歳(「国立社会保障・人口問題研究所『人口問題研究』」の統計より)で、その年に生まれた子は現在50歳になっています。
2021年現在50歳の方の母親は、77.74歳となっており、9.4%の方が母親の介護問題を抱えています。現在60歳の方は、43.7%の方が何らかの形で母親の介護に携わっていることになり、父母両方の介護に携わっている可能性も高まります。
晩婚化が進み、働く世代の親の高齢化が進めば、今後、更に多くの人が働きながら介護に携わることになります。
「改正高年齢者雇用安定法」の施行後、会社の中枢を形成する世代が介護で仕事ができない、または仕事が制限される経営リスクは、近年非常に高まっています。
2017年に総務省が発表した『令和29年就業構造基本調査』によると、「介護・看護のため過去1年間に前職を離職した人」の数は、2012年時点で約10万1,100人、2017年時点で約9万9,100人。
国や企業が介護支援制度を拡充しつつある中で、介護離職者は毎年10万人程で横ばい状態です。
その理由はどこにあるのでしょうか。
介護従事者に必要な企業支援とは?
2013年に三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が行った調査では、介護離職をした人の半数以上が「仕事を続けたかった」と回答しています。
「上司に相談しにくい」「周囲にかける負担や時短など特別な勤務体系がストレスになる」「終わりがみえない介護生活で心身ともに疲れ切ってしまう」などの理由で離職を選択することが多いようです。
仕事が複雑化し、働き方が多様化する中で、企業は考え得る限りの介護支援制度の充実に努めていますが、支援制度の整備に加えて、従業員が制度を利用しやすい雰囲気の醸成も非常に重要です。
(1)経営と管理職が介護支援制度と介護の現状を正しく理解する。 (2)介護従事者が不利益を被ることなく相談できる体制を作り出す。 (3)介護者に従事している従業員のフォローアップをチームとして行う体制を作る。 |
これらをできる限り短期間に実行に移す必要があります。
(2)と(3)を効果的に実行するためには(1)が前提で、(2)、(3)の仕組みを実効性のあるものとするには、「介護は必ずわが身にも起こること」だということを、職場全体で共有することこそ最大のカギなのです。
職場の介護問題の共有と、介護が現実のものとなった時に備えるために星和ビジネスリンクは「キャリア羅針盤『幸せな介護』」をリリースしました。
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