定年後研究所・ニッセイ基礎研究所 共同調査研究
「中高年女性社員の活躍に向けた現状と課題」の一部を初公開

 一般社団法人定年後研究所と株式会社ニッセイ基礎研究所は、一般職の女性社員のキャリアに関する詳細な意識調査等を実施しました。本号では、これらの調査から見えてきたことを定年後研究所の池口所長から紹介していただきます。

●一般職の女性社員を対象にしたアンケート調査・企業インタビューを実施
 定年後研究所は、ニッセイ基礎研究所と共同で中高年女性社員、とりわけ一般職層に焦点を当てて、当該層のキャリアに関する意識調査(Webモニターアンケート調査)を行いました。並行して企業の人事部門(ダイバーシティ担当部署やシニア社員活躍担当部署)に対してキャリア形成支援に関する取り組みについてインタビュー調査を実施しました。

 調査の全貌をまとめたレポートは2月に公開予定ですが、メールマガジン読者の皆様には、ほんのさわりだけですが、その概要をお届けします。

● 調査の背景
 役職定年や定年後再雇用を受けての中高年社員をめぐる処遇面での厳しい現実が、時折マスメディアやビジネス雑誌にセンセーショナルに取り上げられています。私たち定年後研究所も、これまで中高年社員の活性化に焦点を当てた企業人事部門の取り組み内容のヒアリングや、中高年社員当事者のキャリア価値観を探るインタビュー取材などに力を入れてきました。ただ、これらの調査と発信は、対象を暗黙裡に「総合職男性管理職」にしていたケースが多かったのではないかと思います。

 一方、ダイバーシティ経営に目を移すと、その本丸とも言える「女性活躍推進」は多くの企業で既に長期間にわたって取り組まれ、広く、深く展開されていることは衆目の一致するところです。「女性管理職占率〇〇%」などの経営目標が掲げられ、若手中堅の女性社員を対象にして管理職候補の裾野拡大に力が注がれ、これらの努力が着実に実を結びつつある企業が多いことを実感しています。ただ、これらの取り組みも暗黙裡にその対象を「総合職女性」や「総合職転換に応じた若手中堅女性社員」としているケースが多いのではないでしょうか。

●共同調査の概要
 Webモニターアンケート調査は、大企業勤務の45歳以降の女性正社員(総合職・一般職・定年後再雇用に区分)1,300人強を対象に「就業価値観(働く動機、管理職志向、仕事への姿勢等)」「これまでの経験(転勤、研修、産休・育休、介護、学び直し等)」「今後希望する働き方(いつまで働きたいか、会社への支援要望等)」「プライベート情報(家族状況、収入水準、健康状態等)」「属性情報(学歴、業種等)」の幅広い視点で行われました。

●調査から見えてきたもの
 特徴的だったのは、「50代後半の一般職層」で約2割が管理職への登用希望を持っており、同じ年代の総合職層との違いがさほど大きくないとの結果であります。50代の一般職層は、これまでの社内研修受講経験が少なく、管理職登用研修の受講率はわずか5%程度でありました。ただ約2割の登用希望層は、経験はなくても管理職登用研修や、転勤を伴う異動、チームリーダー職務への希望が極めて高く、機会の付与次第では女性管理職登用の有望な候補層と見なせることが明らかになりました。併せて当該層は「高度な仕事へのチャレンジ意欲」や「業績への貢献意欲」も旺盛であることから、彼女らを活かす職場でのマネジメントや人事制度運用が重要と言えるでしょう。

 企業人事部門に対してのインタビュー調査は、様々な業種の日本を代表する大企業11社からお話を伺うことができました。
 大半の企業では、ダイバーシティ担当者とシニア活躍担当者にご同席をいただき、「社名は一切非公表」を前提に、「中高年社員(50~60代)の活性化」「女性活躍、ダイバーシティ推進」「中高年女性社員への期待」の3つの視点で、半構造化インタビュー方式で比較的自由にお話を伺いました。

 結果として、
・ポストオフ後のシニア社員の活躍に関しては、経験を活かせるプレーヤー型のポスト開発の検討が進みつつある。
・女性活躍に向けては、意識改革の機会提供や、働きやすさに配意した環境整備等メニューは出そろった感があり、今後は制度の円滑な運用や、人物本位の登用に焦点が当たってきている。
・中高年女性の中には、初めて全国転勤を希望する層が出てきたことや、高い実務力とコミュニケーション能力を活かす方向での活用対策・期待感に言及する企業も数多く見られる。
このような点が特徴として見えてきました。

 2月の完成版レポートには、11社の具体的な取り組み内容も記載しておりますので、ご期待いただければと存じます。

 当レポートにご関心をお持ちの方は、定年後研究所Webサイトの「お問い合わせ」より、「中高年女性社員の活躍に関するレポート希望」の旨のご連絡をお願い申し上げます。

【筆者略歴】
池口 武志(いけぐち・たけし) 一般社団法人定年後研究所 理事所長

1986年 日本生命保険相互会社入社。
本部リテール販売部門、人事、営業企画、契約管理、販売最前線等で長く管理職(部長、支社長など)を経験し、多様な職種の人材育成にかかわる。その間、オックスフォード大学 Diplomatic Studies修了。
2016年 研修事業も行う株式会社星和ビジネスリンクに出向。
「キャリア羅針盤®」の開発を統括。現在、同社取締役常務執行役員も務める。
2023年3月 桜美林大学大学院老年学修士課程修了。キャリアコンサルタント、消費生活アドバイザー、AFP、日本心理的資本協会理事、シニア社会学会会員
著書に『定年NEXT』(廣済堂新書 2022年4月)、『人生の頂点は定年後』(青春新書インテリジェンス 2022年10月)


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