心理的安全性を高くする言葉使い
チームの心理的安全性を高めたい。そのために、普段チームで使っている「言葉」を見直してみましょう。 最終回は「1on1」が楽しみになる言葉と「リモートワークで心理的安全性をつくるポイント」をご紹介します。 |
● 「1on1」が楽しみになる言葉
チームの心理的安全性を高めていくために、1対1の関係から心理的安全性の高い場にしていくという手段があります。実際、いきなりチーム全員に共感してもらうより、ひとりの仲間づくりから始めることで、チームや組織の心理的安全性浸透を実現している例もあります。ひとりの仲間づくりのために、活用できる場として「1on1」があります。
「1on1」をいかに心理的安全性の高い場にしていくか、その具体的な言葉がけを紹介します。実際に「1on1」をしていない方も、1対1で話す場面で参考になさってみてください。
「1on1」には、どのような目的があるのでしょうか。組織によって「1on1」の定義や目的は異なると思いますが、うまくいく「1on1」は「リーダーの時間ではなく、メンバーの時間として行われている」という特徴があります。
リーダーが話したいことを話す場や、業務上の問題点を尋ねる場ではありません。その認識をお互いに合わせたうえで対話をスタートさせることがポイントです。そしてメンバーの時間にするには、以下の2つを目的にすると良い「1on1」になりそうです。
(1) メンバーに気づきが生まれる
(2) メンバーに行動の選択肢をなるべく多く持ってもらう(行動がしやすくなる)
普段あなたの行っている「1on1」はいかがでしょうか。
タスクの進捗を個別に確認する場であったり、業務上の指摘や個別指導をする場になっているようでは、業務中のミーティングとなんら変わりません。お互いなんのために「1on1」の時間をとっているか分からなくなってしまいます。
リーダー(聞き手)が心理的安全性を高める「きっかけ言葉」や「おかえし言葉」を用意して、臨むことが大切です。
● 「1on1」で有効な「きっかけ言葉」
NG:「『1on1』ってどんなこと話すといいんだろうねぇ…」
↓
OK:「これまでの『1on1』、うまくいっていないと思っていて、今回から改めてきちんとやりたいんだけど…」
これまで業務報告などになっていたのなら、まずはこの言葉から始めましょう。心理的安全性をつくるには、そのきっかけとしてリーダーの「宣言」が大切です。たとえば、リーダー自身が「今後チームの心理的安全性を高めていきたいと思う」と宣言すれば、メンバーはリーダーの言葉掛けや行動の変化を受け入れやすくなります。
「1on1」がこれまでうまくいっていないと感じているなら、そのことを率直に伝えたうえで目的を共有しましょう。
NG:「今やっているあの件だけど、確認させてもらっていい?」
↓
OK:「最近、仕事で楽しかったことはなんですか?」
あなたがチームリーダーで、相手(メンバー)にたくさん話してほしいとき、特に冒頭ではできるだけ具体的な問いかけをすることが有効です。リーダーが聞きたいことを聞くのではなく、メンバーのことを「知る・理解する」ための「きっかけ言葉」を用意しましょう。「最近」と時間を限定し「仕事」と場面を限定すると、メンバーは考えやすくなります。そして「楽しかったこと」を聞くと、本人がそう感じたことを言えばいいので、答えやすいのです。
●「1on1」で有効な「おかえし言葉」例
NG:「それはさ…」
↓
OK:「ちょっと思ったことを言ってもいいですか?」
「1on1」をしていると、リーダーがアドバイスをしたくなることがあります。相手の話を聞きながら問題点や改善点が浮かんできたらアドバイスをする。一見自然なことなのですが、さらに良い「1on1」の場にするために、メンバーの「聞く態勢」を整えてあげてからアドバイスをしてみましょう。くどいようですが「1on1」はメンバーの時間です。相手が「話す」態勢になっているときに、いきなりアドバイスをすると、話しながら回転していたメンバー(相手)の思考が止まってしまうことが多くあります。メンバー(相手)の了解を得て、聞く態勢が整ってからアドバイスするようにしましょう。
● 「1on1」の最後に使うと有効な言葉
NG:「他に何かある?」
↓
OK:「ここまで話して感じたことを教えてもらえますか?」
「他に何かある?」と訊かれたら、それに対する答えは大抵「大丈夫です」「特にありません」です。「1on1」の場を心理的安全性の高い場にしていくためには、相手に話しやすさを感じてもらうことが重要です。「ほかに何かある?」という“クローズドクエスチョン”ではなく、「感じたことを言う」という自由に話す機会を提供するようにしてください。「1on1」に対する感想でも、仕事に関することでも、感じたことを聞くことで、話す態勢の相手を最後まで尊重することができ、その結果リーダー(あなた)とメンバー(相手)の間で心理的安全性が高まります。
●リモートワークで心理的安全性をつくるポイント
「オンラインミーティングで、活発な議論が生まれない」
このような相談をたくさんいただきます。参加しているメンバーに発言を促しても反応が薄い。こんなときは「きっかけ言葉」を工夫しましょう。
NG:「何か意見がある人いますか?どんな意見でもどんどん言ってください」
↓
OK:「〇〇さん、どんなことでもいいので意見をもらえますか?」
実際に集まってする「会議」と、「オンラインミーティング」の決定的な違いに、「視線を送っても気づかれない」ことがあります。集まって会議をしていれば、話してほしい相手にさりげなく視線を送り、「意見がある人はいますか?」と言えば視線に気づいた人がそれを察することができ、発言につながります。
しかし、「オンラインミーティング」では、メンバーが視線を感じることができません。こんな時は名前を呼んで(指名して)、発言を促すだけで会話が増えます。
●言葉の奥にある想いを大切に
ここまで、場面ごとに実際に活用できる心理的安全性をつくる言葉をいくつか紹介してきました。あなたが普段使っている言葉の中に、NG言葉があったのであれば、その言葉を少し変えるだけで着実にチーム内の心理的安全性を高めていくことができます。
しかし、ただ言葉を変えればいいわけではありません。メンバー(相手)はリーダー(あなた)の「姿勢」「表情」そして「視線」で考えや想いを察します。言葉の奥にあるあなたの「心理的安全性の高いチームをつくりたい」という想いがあって初めてこれらの言葉が活きてくるのです。
「良いチームをつくりたい」という想いを大切に、普段なにげなく使っている言葉を「心理的安全性をつくる言葉」に変えていきましょう。
【筆者略歴】 原田 将嗣 (はらだ・まさし) 株式会社ZENTech シニアコンサルタント 株式会社Eachway 代表取締役 コーチ/心理的安全性認定ファシリテーター 前職スターツグループでは注文住宅営業・マネジャー、人事部門を経験。トップ営業マンに贈られる金賞受賞。 後に、ホールディング会社のスターツコーポレーションでコンプライアンス部門を経験。グループ社員約8,000名への教育・啓発活動に携わる。 国際コーチング連盟認定マスターコーチの谷口貴彦氏に師事しコーチングを学ぶ。 2020年4月、プロコーチとして起業。パーソナルコーチ、企業研修コーチに加え、スポーツコミュニケーション アドバイザー&コーチとしても活動。 ZENTechでは企業へ心理的安全性を浸透させるための組織開発・育成計画の企画提案、研修講師、マネジャー向けコーチングを担う。 【著書】 |
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