最終回 「あなたの老後を輝かせるもの」

 星和HRインフォメーション(メールマガジン)では、昨年12月14日から3回にわたって行動科学マネジメント研究所所長 石田淳氏のお話しをうかがってきました。最終回は、「老後を輝かせる行動」のお話をしていただきます。

◎老後は「苦労」しかないのか?

「85歳まで働く自分を想像して、今、やるべきことを考えて『学び直し』をする」。
「健康であり続けるために『新しい習慣』を身に付ける」。
「ストレスに負けないよう『マインドフルネス』を日常に取り入れる」。

 これまで、人生100年時代を生き抜くためのいくつかのヒントをお話ししてきました。
それらは「老後も長い期間、働き続けなければならない」という、いってみればネガティブなテーマが前提となっているわけですが、私は決してこれからのビジネスパーソンの中高年以降、苦労しかない、暗澹たるものでしかないと悲観的に考えているわけではありません。

 年老いても働き続けなければならないという人生はもちろん大変なことです。しかし、健康寿命を延ばす取り組みを行うことによって、老後にも数々の楽しいこと、生きがい、喜びを感じることがあるはずです。50代は、それらを享受するための準備期間と考えてもいいのではないでしょうか。

 この連載中、「新しい習慣の身に付け方」についてお話しした際に、「達成感」「自己効力感」が行動を後押しするということを紹介しました。これは、いくつになっても変わることのない人間の行動原理です。年齢には関係なく、新しいことにチャレンジして、スモールゴールをクリアしていくごとに「達成感」「自己効力感」を覚え、それがまた新たなチャレンジの源となっていく……。そこには新たな「楽しみ」や「喜び」「生きがい」を感じられる瞬間が待っていることでしょう。

 いつまでもそんな生活を送りたいと、私は強く思います。

◎あなたの「挑戦」があなたにもたらすもの

 以前もお話ししたように、私は40歳を過ぎてからマラソンに挑戦しました。少しずつ、小さなゴールをクリアしていくことで、数々のマラソン大会を完走し、もっと高いハードルに挑戦し、それらをクリアすることでさらに新たな目標に挑戦する……。そんな「挑戦のスパイラル」にハマったわけです。

 マラソンレースで「達成感」「自己効力感」を得た私は、50代で登山にも挑戦しました。最終目標は「エベレスト登頂」です。それまで本格的な登山経験のなかった私ですが、スモールゴールをクリアすることを続けながら少しずつ少しずつ準備を整えました。非常に残念ながら、エベレスト登頂はコロナ禍による海外渡航の制限により断念せざるを得なかったのですが、この挑戦の過程で小さなゴールをクリアしながら次の行動の計画を立てるという流れに、私は仕事では得ることのできない大きな生きがいを感じていました。

 また、こうした挑戦のなかで得た「達成感」「自己効力感」の他にも大きな喜びを得ることができました。それは「仲間」の存在です。共にマラソンに挑戦する、登山に挑戦する、そこにはその仲間たちからさらに広がる人脈。「仲間」と共に過ごす時間、新たな出会い。50代後半の私ですが、仕事以外にも〝やりたいこと〟が次々と現われました。

 「仕事ばかり」の人生では、当然のことながら「仲間」や新たな出会いも「仕事がらみ」に限定されることになります。たとえば、あなたが今の仕事を辞めた後には、そうした「仕事仲間」たちとは疎遠になっていくでしょう。言い換えれば、年齢を重ねるにつれ、あなたの周りからは「仲間」が去っていくということです。より充実した人生のためには、「仲間」の存在が欠かせないと私は考えています。新たなことに挑戦して、「達成感」「自己効力感」を得る、そして新たな「仲間」をぜひ手に入れていただきたいものです。

◎セルフマネジメントであなたの人生を輝かせる

 多くのビジネスパーソン、特に会社勤めの人は、仕事において常に誰かにマネジメントされる立場にあるでしょう。誰かに管理され、組織のルールに則って仕事をし続けることが日常なのです。

 しかし、将来会社を離れれば、自分のことはすべて自分で管理しなければなりません。仕事のみならず、健康の管理も若い頃よりもより気を配る必要があるでしょう。そして人生を充実させるための新たな挑戦も。中高年以降は、自らを管理する「セルフマネジメント」に注力していかなければなりません。

 幸せな老後を過ごすか、暗い老後を過ごすか、それを決めるのは「今」のあなたにほかなりません。新たなスキルや知識を獲得する。良い習慣を身に付け健康な毎日を送る。不安に苛まれず、いつも平穏でいられる。新しいことに挑戦して「達成感」「自己効力感」と「仲間」を得る。そのために必要なのは「強い意志」でもなく、「精神力」でもありません。必要なのは「行動」です。

 どんな「行動」をすればいいか、どうすれば「行動」を繰り返すことができるかという、「セルフマネジメント」のスキルが大切なのです。「誰かの人生ではなく、自分自身の人生を生きていく」その喜びを知ったなら、そのための「行動」は繰り返され、「習慣」となり、あなたの「人生」となります。それが、人間の行動原理なのです。

【筆者略歴】
石田 淳(いしだ・じゅん)

行動科学マネジメント研究所所長
株式会社ウィルPMインターナショナル代表取締役社長兼最高経営責任者
米国行動分析学会(ABAI)会員
日本行動分析学会会員
日本ペンクラブ会員
日経BP主催『課長塾』講師

 米国のビジネス界で大きな成果を上げる行動分析を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジ。「行動科学マネジメント」として確立。グローバル時代に必須のリスクマネジメントやコンプライアンスにも有効な手法と注目され、講演・セミナーなどを精力的に行う。著書多数。

【著書】

無くならないミスの無くし方 ~成果を上げる行動変容
『無くならないミスの無くし方 ~成果を上げる行動変容』
石田 淳〈著〉
日経BP社〈刊〉(2021年12月

定価 1,650円(税込)
「やりたいこと」を全部やる技術:行動科学で最高の人生をつかむ43の方法
『「やりたいこと」を全部やる技術:行動科学で最高の人生をつかむ43の方法』
石田 淳〈著〉
実業之日本社〈刊〉(2021年10月)
定価 1,540円(税込)
いつまでたっても動けないあなたが「すぐやる人」に変わる100の言葉
『いつまでたっても動けないあなたが「すぐやる人」に変わる100の言葉』
石田 淳〈著〉
永岡書店〈刊〉(2021年6月

定価 1,320円(税込)



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