自社内にロールモデルとなるシニア社員はいますか
~社内外で新たな役割を創り出すロールモデルに学ぶ~

 定年後研究所*1の池口です。弊所では、中高年社員の活性化に関心のある企業人事担当者の情報交換の場として「シニア活躍推進研究会*2」を対面方式で定期開催しています。そこでは産官学の有識者のご講演とともに、分科会で人事担当者同士の忌憚のない情報交換をしていただいております。

シニア社員のキャリア課題
 実に様々な悩みが企業人事担当者から聞かれますが、最も多いのは、
「受け身のキャリアを重ねてきたシニア社員は、自ら役割を創り出す心構えが薄い」
「プロボノや副業など外に目を向ける機会を設けても手を挙げるのは若手社員ばかりで、
シニア社員からの反応がない」
「キャリア研修を希望制に変更したが、キャリア自律意識の低い層は手を挙げてくれない」
「体験発表をお願いできるようなロールモデルとなりえるシニア社員やOB・OGが見当たらない」
との声です。皆様の会社ではいかがでしょうか。

 キャリアの一定の振り返りはできても、セカンドキャリアをこれまでの延長でしかイメージできないとの声もよくお聞きします。
私自身も長年受け身のキャリア形成をしてきた世代の一人として、外に目を向けようとしないシニア社員の内面が理解できるような気がします。自社内に限られた職場経験だけでは、未知の分野で自分の能力が通用するのか想像もできず、尻込みをしてしまうのは無理もないことかも知れません。

シニア社員の自己効力感*3を高めるには

 自己効力感の研究で著名なバンデューラは、自己効力感の形成や変容に影響を及ぼす4つの要素の一つに「代理学習」をあげています。自分が実際に行動していなくても、他者の経験を観察することで、「これは自分にもできそう」「少し背伸びや勉強をしてみることで、自分もあの先輩のようになれるかもしれない」と感じることができれば、自己効力感は高まります。そして新たなチャレンジや社外への踏み出しを促すことも期待されます。

 私がアドバイザーを務める「早稲田大学キャリア・リカレント・カレッジ*4」では、「キャリア羅針盤*5」を活用した自己理解作業に加えて、多彩なロールモデルにご登壇をいただき、受講生に豊富な「代理体験」の機会を提供しています。同じ世代や少し先輩にあたる等身大のロールモデルが語るキャリアストーリーは、受講生一人一人のキャリアの可能性、自己効力感を徐々に広げていき、やがて自らが、自分たちの志向にあったロールモデルを探しだし、能動的に学びを重ねていく行動変容に繋がっています。

「自己理解作業」と「代理体験」が「最初の一歩」を促す



キャリア羅針盤「ロールモデルに学ぶ」
 定年後研究所では、これまでも多彩なロールモデルにインタビューを行い、その意識と行動変容のプロセスを調査研究してきています。今回、その集大成の一つとして「キャリア羅針盤:ロールモデルに学ぶ」をご提供する運びとなりました。
「役職定年後の新たな役割に生きがいを見出し、意欲的に学習することでセカンドキャリアの道筋も描いた方」
「早期退職勧奨に応じ、学びのインターバルを置くことで、本来やりたかったことにチャレンジし、パラレルキャリアを実現した方」
「再雇用後の社内での仕事にやりがいを見出せず、社外公募に手を挙げたことから、再雇用期間を活かしきり、65歳以降のキャリアの充実を手にした方」
など5名の方に語っていただき、自らのキャリア後半の探索に前向きになっていただくことを狙いとしています。

 ご関心のある方は、定年後研究所のサイト「お問い合わせ」よりご照会ください。

◎一般社団法人定年後研究所 お問い合わせフォームはこちら

*1 一般社団法人定年後研究所 概要等(HP)はこちら
*2 シニア活躍推進研究会
主として大手企業の中高年社員の活躍をテーマに、人事担当者を対象に「付加価値の高い情報提供」と「人事担当者の情報交換の場づくり」を目的として、東京・大阪会場別日程にて対面方式で定期開催しています。
*3 自己肯定感 バンデューラが提唱した概念で、目標を達成するための能力を自らが持っていると認識すること。
*4 早稲田大学キャリア・リカレント・カレッジ
ミドルシニアのビジネスパーソンが自分らしいキャリア後半を設計することを目的に、早稲田大学と定年後研究所共同で開発した半年間の履修証明プログラム。今期は2024年10月開講予定。
*5 キャリア羅針盤
中高年社員が、自身のペースで深い自己理解、キャリア探求を行うeラーニングプログラム。定年後研究所が総合監修し、渡辺三枝子氏、川島隆太氏など各界の第一人者が内容を執筆。